9月5日に台風15号の接近に伴う影響で発生した国内最大級の竜巻。

フジテレビ災害対策チームが専門家とともに被害現場を検証したところ、日本ではこれまでにないスケールの竜巻だった可能性が浮かび上がりました。

防衛大学校・小林文明教授:
局所的にはJEF4(風速81メートル以上)でもおかしくない。

竜巻による甚大な被害を受けた静岡県。
台風による浸水などを含めると被害住宅は2000棟、住民1人が死亡し83人が重軽傷を負いました。

最初に被害が確認されたのは掛川市。
時刻は午後0時半ごろでした。

その20分後、牧之原市と吉田町など2カ所で同時に確認されました。

トレーラーが横転するなどした牧之原市。

その現場へ、竜巻の調査を30年以上続けている防衛大学校の小林文明教授と向かいました。

防衛大学校・小林文明教授:
今回の(風速)75メートルという気象庁が発表したのは、ここら辺であるというふうに考えればいい。

風速が75メートルに達したと気象庁が推定しているのがこの地点で小林教授は「内圧が高まって両側のガラスが割れる。それだけでは済まず、ガラスと一緒に壁面も剥がされている」と話します。

そして、海沿いでは立て看板の支柱が大きく変形していて、小林教授は「看板が変形している。普通ではここまでならない。(竜巻が)生まれた場所は『ここだ』という言い方もできる」とも話しました。

その竜巻を、階段付近で捉えた2つの映像が存在します。

動画の撮影時刻は午後0時53分と57分。

まさにその間に竜巻は成長していたというのです。

防衛大学校・小林文明教授:
4分間で竜巻も成長するし規模も大きくなってきている。牧之原の竜巻の生まれた直後と成長する発達期という渦を捉えた。

成長しながら進んでいったとみられる竜巻。
被害は山のほうにも及んでいました。

竜巻で何度も浮いては地面にたたきつけられたとみられる車。
フロント部分が損傷し、タイヤはゆがんでいました。

防衛大学校・小林文明教授:
車も本当にぐちゃぐちゃですよね。

当時家の中にいたという男性は、自身が巻き込まれた際の状況を「雨戸をあまり閉めない地域ですけど閉めたほうがいいなと思って、サッシをあけようと思ったら風圧がすごくて。風圧でとばされて、家の中で2回転くらい宙を舞っていると思います。照明がついているけど、それに背中があたって3回目(の突風)でサッシから用水路に落ちた」と話します。

小林教授は、この地域では風速75メートルに達したと推定される地点より被害が甚大だと分析。

更に被害は高台のほうにも広がっていました。

防衛大学校・小林文明教授:
この牧之原の竜巻は日本でナンバーワン。竜巻のスケール自体も、もしかすると500メートルあるいはここであれば1㎞とかという本当に巨大、アメリカのトルネードの最大級ですよ。次々と大きな渦の中で1個目が壊して2個目がまた来て壊して、3個目が来て壊してということを繰り返したというのがここで起こった。

気象庁が推定した風速75メートルは突風の強さの尺度・日本版改良藤田スケールに当てはめると上から3番目の値になります。

しかし、小林教授はこの地域ではそれを上回る風速81メートル以上の風が吹いていた可能性を指摘。

これまでに日本で風速81メートル以上が観測されたことはありません。

国内で前例のないスケールの竜巻が吹き荒れた時一体何が起きるのか。

そして、その猛威からどう身を守れば良いのか。

一体その時、何が起きていたのか矢澤剛気象予報士がCGで再現してくれました。

静岡県の牧之原市から吉田町を襲った竜巻ですが最大瞬間風速約75メートルと気象庁は推定しています。

75メートルの竜巻の再現CGでは、画面の奥から渦を巻いたものが近づいてきます。

縦長で黒い竜巻の接近前から木は大きく揺れ、地上のものをどんどんと巻き上げながら近づいていきます。

そして、電柱なども次々となぎ倒され、屋根や家の壁が迫ってくるような危険な風の吹き方です。

ピーク時には全く視界は見えなくなります。

通り過ぎたあとは、木はかなりなぎ倒されていますし家もボロボロの状態になっています。

こういったことが牧之原市などでは起きていたと考えられます。

もう1周じっくり見ていきますと、竜巻が最も近づく前から家の壁が飛ぶようになっていきます。

そしてこのあと、木は次々となぎ倒されていきます。

実際に牧之原市では、鉄骨でできた店舗の外壁が飛散するなどの被害もあり、風で巻き上げられたものが当たって壁に穴が開いた住居も多数あったということです。

竜巻が通り過ぎたあとは各地、街は家が崩されていたり全壊や半壊の被害が起こっていました。

――我々はどうやって守ればいいか?
一般的に竜巻から身を守る時は頑丈な建物の中に避難する。
窓のない部屋に移動、丈夫な机やテーブルの下に入るなどと言われていますが、今回被害に遭われた男性は「家の中で2回転くらい回った」「部屋から放り出され用水路に落ちた」と証言されていますので、このクラスの竜巻ではこれだけの対処法では十分ではないということがうかがえます。

家の中でどこが一番安全なのか防衛大学校の小林教授は「家の中の風通しの悪い場所、お手洗いや浴室などに避難すること。更にバスタブの中に入って、子供は下に、大人はその上に覆いかぶさるようにし、一番上に毛布を掛けて頭を守るといった対策をするべきと」と話していました。

こういった対策というのは、トルネード・竜巻の本場といわれるアメリカで行われているようなことで、小林教授は日本でもこういう方法をとらなければいけないほどの竜巻が起こっていると話していました。