2025年9月1日から市街地にクマが出た際に一定の条件を満たせば、市町村の判断で猟銃の使用が可能になりました。
スピード感ある対応が可能になる一方、本当に市街地で撃てるのか課題も多くあるようです。
9月1日から施行された改正鳥獣保護管理法。
これまで市街地では原則、猟銃の使用はできないとされていましたが、改正法では、「住宅地などの日常生活圏にクマが侵入」、「緊急の人への危害防止措置が必要」、「銃以外に迅速な捕獲等が困難」、「人に弾丸があたるおそれがない」と市町村長が判断した場合に、「緊急銃猟」として発砲が可能になります。
「緊急銃猟」の現場は、どのように受け止めているのでしょうか。
島根県猟友会・細田信男会長:
島根県でも新聞配達員が襲われたとか、被害が毎年起きていますから。
ある程度、不必要なクマは排除しないといけないと思います。
自治体から駆除の依頼を受ける島根県猟友会の細田信男会長は、今回の法改正に賛成の立場ですが、一方で不安も募らせています。
島根県猟友会・細田信男会長:
銃を持っているから誰でも対応できるかというと、そんなもんじゃないのでクマを撃つということになれば、それなりの練習、訓練が必要。
一番の課題が「ハンターの育成」です。
島根県を含む「西中国地域」と呼ばれるエリアでは、ツキノワグマは絶滅のおそれがあるとして保護対象とされてきたため、自由に動き回るクマを撃った経験のある猟友会員は県内はほとんどいません。実弾で練習するには広島県の射撃場に行く必要があり、猟友会にとっては大きな負担です。
また、こうした課題が解消されたとしても発砲までのハードルは低くくありません。
島根県猟友会・細田信男会長:
この道路沿いに50メートルぐらいに行ったところには、もう民家があります。
2025年5月、クマがいた痕跡が見つかった松江市東出雲町の現場。
数百メートル先には住宅街が広がります。
島根県猟友会・細田信男会長:
(例えば)40の標識にクマがいれば、その向こう側の家の2階から斜め下へ向かって撃つ。そうすれば(弾がどこかへ飛ぶことなく)地面に入る。そういう撃ち方を常に頭において考えます。
跳ね返った弾による二次被害の可能性もあり、完全に安全を確保できなければ引き金は引けないといいます。
島根県猟友会・細田信男会長:
(人身被害のリスクなど)そんな負担を持って銃を撃つわけにいかないんですよ。
できるだけ、そういうリスクが生じないような措置を市町村とか県は、きちんととっていただきたいというのが猟友会側の考えです。
「緊急銃猟」の判断を下す自治体側からも懸念の声が上がっています。
県内のほとんどの市で避難指示を行う警察との協議やマニュアルの制作など準備が進められていますが、検討すべき内容が多く、年度内の運用は難しいとしています。
市民を守るための今回の法改正。安全な運用のためにはまだ多くの課題が残っています。