下水道管の内側は普段、小川のように静かに水を流しています。

しかし、一度想定を超える流入が起きれば、複合的な現象が一気に起こり、事故に繫がるおそれがあります。しかもそれは、管の状態や点検の記録だけでは予測できない変化でもあります。

こうした気象の変化を前提とするならば、点検の基準や優先順位もまた、更新が求められるかもしれません。「いつ壊れるか」だけでなく、「壊れたときにどれだけの影響が出るか」という視点を、制度や管理体制の側にも組み込んでいくことが必要です。

忽然と沈んだ各地の道路

これまで見てきたように、下水道の事故は単一の要因によって起きるものではありません。

経年による劣化、硫化水素による腐食、軟弱な地盤、雨水管など他の地下設備との干渉、そして気候変動による極端な降雨や気温変化など、複数の要素が重なり合い、時間の経過とともに蓄積し、ある日突然、地表に崩壊として現れます。

下水道の事故は複数の要因が重なって起こる(画像:イメージ)
下水道の事故は複数の要因が重なって起こる(画像:イメージ)

そうした構造的なリスクは、すでに全国各地で姿を現しています。

たとえば、2022年7月、仙台市の市道では、長さ約4.5メートル、幅1.6メートル、深さ2メートルにわたる陥没が発生しました。1982年に敷設された直径60センチの下水道管に穴が開き、そこへ土砂が流れ込んだとみられています。

同年6月、埼玉県川島町の国道254号の歩道でも陥没が発生し、自転車に乗っていた80代の男性が転落しました。腐食が進行した下水道管に土砂が吸い込まれ、地盤が支えを失っていたことが原因です。

脆さが露呈した博多駅前の陥没

そして、より大きな規模で都市インフラの脆さが露呈したのが、2016年11月に福岡市の博多駅前で発生した道路陥没です。