そこまで、思い詰めた市ヶ谷に対し…。

【再現VTR】
市ヶ谷氏の妻 「お父さん、それだけはやめてください!私にも、いくらかの貯金はあります、まずは、それを使ってください(涙)」

 全力でサポートしたのは、妻だった。

 ではなぜ、それほど売るのが難しい商品に生命保険を解約しかけてまで、賭け続けたのかと言えば…。

 「拝啓、貴社開発の空調服、素晴らしいの一言です」

その頃、わずかながら売れてゆき、修理に戻ってくる空調服の多くにこんな手紙が入っていたことだった。

「夫は多汗症です。この空調服は俺のために作られたと楽しく使っています。「それゆけドラえもんみたいに飛んで行け!』と、娘は笑います。」

修理依頼と共に、続々と届く感謝の手紙。ここで辞めたら、修理を待ってくれる人々に申し訳ない。こうして、市ヶ谷と胡桃澤が作り上げた空調服は徐々に口コミが広まっていき…。

空調服・市ヶ谷弘司会長:
鉄筋工の方から始まったんですけど、「あ、これすごいですよ、休み取らないでできます」とか、気がついたら、年間10万着、20万着とかどんどん増えていって。

そんな口コミの発信源のひとつ、「大和軌道製造」はその効果を、こう振り返る。

大和軌道製造・山田 哲也常務:
(現場は)変わりました。まず熱中症にかかる人がいなくなりました。

大和軌道製造・山田 哲也常務:
(体温が)気化熱で逃げていきますので、ですから発汗量が少なくて、その分体力の消耗が少ないですから。

これほど、世の中を変えた78歳と82歳の2人は今日も、空調服の未来を目指し、開発と向かいあう。

空調服・市ヶ谷弘司会長 :
本当にもう、いま熱中症対策でクーラー、クーラー、エアコン、エアコンって言っているけど、体と空調服自体が、いわば室内機と室外機の関係。そこはちゃんとコントロールしてやれば、エアコンどころじゃなくて、ものすごく理想的になるんですけどね。

かつて、ソニーの伝説・井深大氏と写真を撮った平社員は、当時、「なんだソレ?」と言われたウォークマンのように、それから約半世紀、「なんだソレ?」と笑われた空調服を世界の当たり前にしようとしている。
(「Mr.サンデー」8月31日放送より)