東日本大震災で被害を受けた宮城、岩手、福島3県の今をお伝えする「明日への羅針盤」。今回は被災した宮城県内の沿岸部を防災リーダーを目指す兵庫県の中学生と高校生が訪れました。学んだのは「行動に移す防災」です。
宮城県石巻市にある震災遺構・大川小学校。兵庫県から48人の中学生と高校生が訪れました。
佐藤敏郎さん
「きょうは兵庫県の高校生のお兄さん、お姉さんが来ています」
阪神淡路大震災をきっかけに兵庫県が始めた「防災ジュニアリーダー育成」の一環で宮城での研修は2012年から続いています。
避難計画の不備から児童と教職員あわせて84人が死亡または行方不明となった大川小学校。
佐藤敏郎さん
「ようやく立ちあがって一列で向かったと思ったら、1分もしないうちに向かった方向から津波が来ました。ここを出て走っていく子供たちの姿をいつも想像します」
生徒たちを案内したのは佐藤敏郎さんです。津波で、小学6年生だった次女・みずほさんを亡くしました。
佐藤敏郎さん
「想像してください。そして想像した中に自分も入れる。ここから出てくるのは自分だし、自分の大切な人、大好きな人、友達、家族。そこまで考えられた人は何とかしなくちゃ。死にたくないなと絶対思うからそれが防災意識です」
大切な娘を亡くしたこの場所で当時の記憶と災害への備えを伝えます。
佐藤敏郎さん
「俺は十何年間ですごく気づいたことがあります。防災は恐怖じゃないんだよね。恐怖のために防災をやるんじゃない。助かって喜ぶためにやる。防災はハッピーエンドじゃなきゃダメ」
兵庫県の高校生
「今すぐにでも兵庫に帰ってこんなことがあった、こういうことをしたらいいんじゃないかとどんどん広げていきたいです」
佐藤敏郎さん
「ちょっ変わっただけで、全然違う未来がきてたんだよね、きっとね。それを何もない時に気づけるかどうか」
生徒たちのほとんどが東日本大震災の記憶はありません。もちろん阪神淡路大震災は誰も経験していません。
兵庫県の高校生
「話を聞くまでは被災地を結構違う世界だと思っていて、防災はハッピーエンドじゃないといけないということを教えていただいたので、防災の大事さを伝えていけたらと思います」
佐藤敏郎さん
「これをどう伝えるかって、結構難しかったよね」
石巻市門脇では佐藤美香さんの話に耳を傾けました。
佐藤美香さん
「ここでは見ていただきたいものがあります。それはこちらになります。こちらは私の娘の遺品になります」
美香さんの長女、愛梨さん(当時6歳)は通っていた幼稚園で地震に遭いました。沿岸部に向かって本来乗るはずではなかったバスに乗せられ津波とその後の火災に巻き込まれて亡くなりました。
愛娘が遺したクレヨンケースと上履き。自身の手元ではなくこの場所に置くのには理由があります。
佐藤美香さん
「娘の遺品が物言わぬ語り部となり、訪れた人たちにここから何かしら語りかけていると私は思っています。この娘の遺品からどういう言葉が皆さんは聞こえてきますか。耳を傾けていただければと思います」
この研修のプログラムを作成したのは全国で防災教育を行う齋藤幸男さんです。自分の目で何があったのかを見て「生の声」を聞いたから生まれる「共感」こそが、行動が伴う防災につながる鍵だと話します。
齋藤幸男さん
「世の中はデジタルに進んでいくんですけれども、防災に関してはアナログでないと共感は得られない。やはり時間をかけて、その人と顔と顔を向き合う。熱量は現地に来て顔の見える関係でないと伝わらない」
2泊3日の研修初日、生徒たちは、14年前にここで何があったのかを知り、命と向き合いました。
翌日、行われたのは実践的なワークショップ。「避難所運営」や「学校再開」「地域医療」などそれぞれのテーマごとに災害時に起こりうる課題を見つけその解決策を探します。
震災時、対応にあたった経験者から当時の状況を聞きました。
震災当時 避難所運営 平塚真一郎さん
「私がいた学校は避難所がしばらく夏まで続いたのかな。要は避難する人がいながら勉強するスペースを空けてもらっていたかな」
続いて行われたのは避難所の運営訓練。
齋藤幸男さん
「避難所運営するときに、最初にどんな係や役割を必要とするか話してください」
生徒
「身の回りの生活に関わる係を決めます」
齋藤幸男さん
「ほかにどんな係が必要か」
生徒たちに自分が何ができるか主体的に考えさせます。
震災当時、石巻西高校の教頭として避難所の運営指揮にあたった齋藤さん。その経験から震災時には年齢や肩書きなどを超えた柔軟な対応が必要だとも伝えました。
齋藤幸男さん
「大人の縦割りの組織はすぐには変わらないし、変える必要もないと思うんです。縦割り意識だけでも変えておけば、子供の力を借りればトラブルは減る」
斎藤さんが生徒たちに伝えたいのは、被災地に足を運び自らの目で見て感じたことを、具体的な行動につなげてほしいということです。
齋藤幸男さん
「僕のやる防災という教育は、やっぱり自分の命の意味を考えること。命と向き合うこと。自分の命をどのように使っていくか。そういうのを考えて最後に行動に移してほしい。行動に移さない防災はあまり意味がないんですよ」
兵庫県の高校生
「高校生だからこそ伝えられることがあると思うので、知らないみんなに伝えていきたい」「すごく甘く考えていたな。災害というものを。私自身、教育者になりたいと思っているので、子供たちの次世代の人材育成に、この経験を生かしていきたいと思っています」
いつどこで起きるか分からない災害。被災地から次世代の防災リーダーが育っています。