穴を開けて配線を操作 高級車を狙う新たな窃盗手口

富山県内で高級車を狙った新たな窃盗手口が確認されている。特殊な工具で車体に穴を開け、内部の配線を操作してロックを解除するという巧妙な方法だ。今年の自動車盗難件数はすでに昨年に迫る勢いとなっており、県警は複数の防犯対策を組み合わせるよう呼びかけている。
穴を開けて配線を取り出す新手口

「こちらが被害に遭った車。ここにドリルで穴開けて板金カッターか何か、専用工具で切ってこじあけたという感じ」と話すのは、富山市で自動車整備会社「ボディーハウス」を営む村田勇誠社長だ。
先月28日、富山市でトヨタの高級車「レクサスLX」が盗まれそうになり、助手席のドアには10センチ四方の大きな穴が開けられていた。


「ここの裏に配線が埋まっている。配線を取り出して電子機器か何かを繋いで(ドアを)開けようとしたのでは」と村田社長は推測する。
最近は、特殊な機械を車の内部の配線につなぎ、セキュリティーアラームが鳴らないようドアのロックを解除する盗難の手口が増えているという。
「他の(盗まれた)車両をみるともう少し前に穴が開いている。これは慣れていない盗難団がやったのではないか」と村田社長は指摘する。この車は配線が取り出せない位置に穴があけられたため、幸いにも盗難を免れたという。
今年の盗難件数が急増
今年に入り、富山県内では15件の自動車盗難が確認されている。これは昨年1年間の16件に迫る勢いだ(今年7月末時点)。
県警犯罪抑止対策室の竹山一希室長は「高級SUVが狙われている。県内でもこういった車両が狙われている。転売目的などが考えられる。それぞれの部品を分解して、組み合わせて販売する手口もある」と説明する。
メーカーと窃盗グループの「いたちごっこ」
以前は、フロントバンパーを開けてコンピューター制御を解除する手口が主流だった。しかし、自動車メーカーがセキュリティ対策を強化したことで、最近は車に穴を開ける新たな手口が目立つようになった。メーカーと窃盗グループによる「いたちごっこ」が続いている状況だ。
竹山室長は「高級車はセキュリティ対策がしっかりしているから大丈夫と思わないで、1つ2つ3つと対策をしていただくのが盗難の防止には有効」と警告する。
複数の対策で盗難を防ぐ
県警は車を動かせなくするハンドルロックやタイヤロックなどの機器の活用を推奨している。さらに、駐車場にセンサー付きのライトや警報装置を設置するなど、複数の対策を組み合わせるよう呼びかけている。
一つの対策だけでは防ぎきれない巧妙な手口に対し、重層的な防犯対策が必要となっている。