日本人の10人に1人が患っているといわれる「機能性ディスペプシア」。検査では異常が見つからないにもかかわらず胃の不調が続く。精神的なストレスが主な原因で完治は難しいとされているが、上手く付き合っていく方法を専門医に聞いた。
注意すべき症状は主に4つ
機能性ディスペプシアについて話を聞いたのは、福井・福井市にある吉田医院の副院長で消化器内科が専門の沖野真理子医師。
「機能性ディスペプシアとは、胃がんや胃潰瘍、炎症がないのに胃の症状が長く病気で、胃の不調を訴えて受診する人の約5割がこの病気だといわれている」(沖野医師)
ストレスを抱える人が多い現代の日本で、患者は増加傾向にあるという。
その症状は主に▼胃もたれ▼すぐにお腹がいっぱいになる早期満腹感▼胃の痛み▼みぞおちの辺りが焼けるような感覚、の4つが挙げられる。

考えられる3つの原因
胃の検査で異常が見つからないのもこの病気の特徴。
原因については、次の3つが挙げられる。
▼胃の動きが悪い▼胃の知覚が過敏になっている▼社会的・精神的なストレス

治療では“完璧”を求めない
治療法は、生活習慣を整えることと投薬の2つ。胃の動きを活発にする薬による治療に加え、生活習慣の改善が欠かせない。
「自律神経を整える生活習慣が大切で、睡眠をよくとり、定期的な運動、高脂肪食を控えること」と沖野医師。
ただ、「やりすぎ」たり「完璧を求めすぎ」たりは、かえって症状を悪化させることもあるという。
「完璧主義の人は、病気を治すために高脂肪食をやめましょうと伝えると、完全に油をとらないようにしようとする傾向がある。そこまでしなくても、『この症状が少しずつ良くなればいいので完璧を目指さなくていい』と伝えている」

“安心”が改善の手助けに
心理的なストレスの影響が大きく、完治が難しいといわれる機能性ディスペプシア。
沖野医師は「この病気は安心することがまず重要」話す。中には、胃カメラをして癌などが見つからなかったことで安心し、症状が治る人が3割ほどいるという。
診断には必要なくても、沖野医師は、不安が大きい人は胃カメラをすることも選択肢の一つだという。

焦らず、少しずつケアしていくことが回復の助けになる。