刑法の改正により、2025年6月から受刑者に対する刑罰の「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化された。最大のポイントは、懲罰ではなく更生に重きを置くこと。導入後、受刑者の生活はどう変わったのか。福井刑務所を取材した。
更生に向けた「改善指導」が主軸に
7月のある日の午後、福井市にある福井刑務所を訪ねると、受刑者たちが販売用のまな板や革の小物を作っていた。皆、黙々と作業に当たっている。
ここでは原則、初犯で刑期10年未満の受刑者約330人が服役している。
拘禁刑が施行されたことで、受刑者の一日の生活の流れは大きく変わった。こうした刑務作業に当たる時間が減少し「改善指導」の時間が長くなったのだ。
刑務作業が義務付ける懲役と、刑務作業の義務を伴わない禁錮。これを拘禁刑に一本化した最大の目的は、“懲らしめ”から更生へと大きく舵を切ること。その更生に向けて刑務所で行われるのが、改善指導だ。
受刑者によって必要なプログラムは違ってくるが、暴力防止やアルコール依存からの脱却に向けて取り組む。

今回の法改正の背景には、出所後に再び罪を犯す「再犯者率」の高さがあった。
法務省がまとめた2024年度の犯罪白書によると、直近10年は再犯者率が40%後半と、約半数で推移している。
福井刑務所の矯正処遇調査官を務める白岩眞一さんは「これまでも再犯防止のため受刑者に教育活動をしてきたが、懲役刑は作業が義務付けられていて教育時間の確保が非常に難しかった。そこを拡充することで、再犯防止につなげていく」と改善指導の重要性を話す。

更生のためのプロセスを細分化
薬物依存や学力不足など、受刑者が抱える問題はさまざまだ。そのため、更生に向けたプロセスを細分化。薬物からの離脱や義務教育レベルの学習指導を行うなど、受刑者に応じてよりきめ細やかに指導するようにした。
再犯を防ぐカギは、社会復帰後の就労だといわれているが、2023年の調査では再犯者の約7割は職に就いていなかった。
「仕事やお金がなく悪いことをしてしまう。そのリスクを減らすことで再犯を防ぎ、新たな被害者を新たに生まないことにつながる」(白岩さん)

二度と犯罪に手を染めさせないために―
また福井刑務所では、社会復帰の際に必要なコミュニケーション能力や課題解決能力などを鍛えるため、刑務作業の際には受刑者に目標を立てさせるようにした。
目標を立てて評価することを繰り返し、トラブルなく働くためのスキルを身に着けさせるのが狙いだ。
刑務官によると、福井刑務所の受刑者の多くは出所後、働くことに前向きだという。

矯正処遇調査官の白岩さんは「家族や親など、彼らを取り巻く状況を何とか変えていきたいという気持ちはある」とする一方で、「被害者に対する弁償も当然しなければならない。働いて弁償するということは、社会にいる人間としてやるべきだという指導をしているし、彼らもこれまで生きてきた中である程度(被害者に償う意思を)持っている」と話す。
受刑者が自ら犯した罪を償い、再び罪を犯さないために、拘禁刑のもとで受刑者は更生を目指します。