2025年は「戦後80年」の節目の年。戦争の記憶を語り継ぐ“語り部”の高齢化が進み、「いかにして次世代に伝えていくか」を模索する人たちがいる。秋田市で活動を続ける遺族団体は「記憶を映像にして残そう」と新たな挑戦を始めた。
戦争遺族を二度とつくらないために
次々と映し出される戦没者たちの遺影に、終戦前夜に秋田市の土崎地区を襲った空襲のイラスト。

これは、秋田市にある秋田県遺族連合会が制作中の映像資料の一部だ。
終戦から80年がたち、当時を知る“語り部”が少なくなる中、太平洋戦争などで犠牲になった人の遺族で組織する県遺族連合会が、戦争の記憶を次の世代に残そうと制作を決めた。

映像を制作する意義について、県遺族連合会の田口昭益事務局長は「戦後80年で高齢化が進み、記憶を残せる語り手がだんだんいなくなっている。活字で残すケース、映像として生の声で残すケースといろいろ種類はあるが、原点は、高齢化で対象者が少なくなっているから、後世に平和の語り部としてつくっておくということ。二度と遺族をつくらないため、それが原点」と話す。
現役語り部が戦禍の女性の思い伝える
映像には、遺族連合会の女性部に所属する会員が体験した戦時中と戦後の苦労や暮らしぶりなど、約20の話が盛り込まれている。

テーマは「戦禍を生きた女性の思い」だ。
ナレーションを務めるのは、現役の語り部として活動を続け、女性部の部長を務める笠原幸子さん(83)と副部長の浜田セチ子さん(82)。ともに戦争で父を亡くしている。

笠原幸子さん:
秋田県の場合は、直接戦場になった所は土崎しかない。やっぱり戦後の悲しみ、つらさの方が多かった。なので絵に表しにくかったが、制作途中のものを見せてもらい「良かった」と思った。

浜田セチ子さん:
次世代を“戦争のない世界に”と、世界の平和を願いながらナレーションを読んだ。
遺族の悲しみやつらさも知ってほしい
編集を担当するのは、県遺族連合会青年部の部長を務める佐藤勝也さんだ。

佐藤さんも戦没者の遺族で、戦争を知らない子どもたちに平和の尊さを訴える教育に貢献したいと参加している。
「戦争がいけないということ。どれだけひどいことか、分かっているつもりで分からない人がたくさんいる。亡くなった人だけが悲しい苦しいのではなく、親や旦那に死なれて苦しんだ遺族たちの気持ちを分かってもらいたい」と話す佐藤さん。

その上で「戦争をすると、死んだ人のほかにも苦しんでいる人がいるということを子どもたちや若い人に理解してほしい。加えて、遺族がどれだけ世間から迫害を受けてつらい思いをしてきたか、その歴史も考えてほしい」と静かに語った。

終戦から80年がたち、当時を語ることができる人は年々少なくなっている。戦争の悲劇を繰り返さないために、記憶を伝える遺族連合会の取り組みはこれからも続く。
映像は10月に完成予定だ。
(秋田テレビ)