赤い宝石のような輝きを持つブドウ「ルビーロマン」。巨峰の2倍の大きさと18度以上の糖度、そして鮮やかな赤色という厳しい基準をクリアした果実だけが名乗ることを許される最高級ブドウだ。今年も1房100万円の値がつき、日本で最も高級なブドウとしての地位を揺るぎないものにしている。
幻の高級ブドウ「ルビーロマン」

「宝石店や!」
石川県金沢市の野田2丁目、パティスリー&パーラーHorita 205に訪れた彦摩呂さんが驚きの声を上げた。

目の前に広がるのは、鮮やかな赤色を放つ大粒のブドウの房。巨峰の2倍もの大きさを誇る粒は、まるで宝石箱から取り出したルビーのよう。彦摩呂さんはその見た目の美しさに、食べる前から感嘆の声を漏らした。

「これね、私のあのキラーコメントは『宝石箱』ですけども、もうそれを超えてきますよね。まさにジュエリーショップ。宝石店です」

これは、石川県が誇るブランドブドウ「ルビーロマン」。その名の通り、赤い宝石・ルビーのような輝きを持つ高級ぶどうだ。

このルビーロマン、ただ美しいだけではない。毎年初競りでは高値がつくことでも全国的に有名で、驚くことに過去には1房160万円という価格が付いたこともある。今年も100万円の値がついたという。まさに「食べる宝石」と呼ぶにふさわしい高級果実なのだ。

しかし、この奇跡のブドウが生まれるまでには、研究者と生産者たちの情熱と努力があった。
"宝石のような輝き"を放つルビーロマンの誕生秘話
向かったのは石川県某所。県でルビーロマンを研究する須田甚将さんが出迎えてくれた。

「なかなか見ることが出来ない光景です」と須田さん。目の前には見事なルビーロマンの木々が広がっている。

「すぐ近くにルビーロマンが!立派ですね」と感嘆の声を上げる。
ルビーロマンは巨峰の2倍の大きさで糖度は18度以上、さらに鮮やかな赤色という厳しい基準が設けられている。須田さんは、猛暑でも鮮やかな赤色になるよう栽培技術の研究を重ねている。

「このルビーロマン、どういうきっかけで開発されることになったんですか?」と尋ねると、須田さんは石川県のブドウの歴史を語り始めた。
「今では県のブランドブドウとして認知されているルビーロマンですけど、もともと石川県の主力の品種といえばこれなんです」
「デラウェア!確かにそうですよね」

1960年代、石川県は全国でも有数のデラウェアの産地だった。しかし、1970年代に大粒のブドウ・巨峰が登場すると、消費者の好みや市場のニーズが変化。小さな粒のデラウェアは徐々に市場が縮小していった。

「地元のブドウ農家さんから、大きくて高級感があって希少性の高い赤いブドウが欲しいと、そういった要望が寄せられたと当時の担当者から聞いています」と須田さん。

「時代によって、そういった嗜好の移り変わりによって生み出されることになったんですね」と稲垣アナも納得の表情を浮かべる。
「誰もが驚くブドウ」を目指して

こうして、30年以上前、「誰もが驚くブドウ」を目指して新しいブドウの研究が本格化した。新種の開発は、大きな粒と黒っぽい色が特徴の「藤稔」と、赤い実のなるブドウを人工的に交配させることから始まった。

しかし、開発は困難を極めた。
「ブドウは種から植えたら木になって実が採れるまでは3年かかりますし、それから品質を確認したり…先輩たちが代々引き継いで夢をつないでいった」と須田さんは、先輩たちから聞いた当時の苦労を教えてくれた。

開発までに植えられたブドウは、約440本。周囲からは「できるわけない」と言われる中、研究者たちは諦めなかった。
奇跡の一本──ルビーロマンの生みの親
圃場の奥へと進むと、一際存在感のあるブドウの木が見えてきた。

「あ!もしかして…」直感した通り、そこには特別な木が立っていた。
「他の木に比べるとちょっとほっそりしていますが、こちらが始まりの1本になります」と須田さんが説明する。

「確かに少しお年かな?というような感じはありますが、この木から全て始まったんですか」
「今もかろうじて房もつけています」
「本当だ!すごい!」

開発を始めて十数年、ほ場の隅に植えられていたこの木が赤い実をつけたのだ。
440本以上のブドウから赤い実をつけたのはたった4本。そのうち、病気などにも強かったこの木がルビーロマンの生みの親となった。

「まわりのルビーロマンを見守っている感じで、隅に…」
「ここから見ると後輩たちを見守っているように見えますよね」と須田さんも微笑む。

こうして誕生した赤くて大粒のブドウは、赤い宝石・ルビーに生産者の夢を乗せて「ルビーロマン」と名付けられた。
生産者たちの情熱と努力

「きょうは生産者にもお越しいただいている?」と尋ねると、須田さんが「はい。荒川会長、どうぞ」と呼びかけた。
「こんにちは」とルビーロマン研究会の荒川達夫会長。

赤くて大粒のブドウは栽培に高度な技術が要求される。そこで生産者たちは研究会を結成。ブランドを守るため、栽培方法などの研修会や、情報交換を重ねてきた。

「当時の役員など、誰もが驚くブドウをつくろうと県内の生産者が一致団結してきょうに至っている」と荒川会長は語る。
「今後どんな形でつくっていきたいですか?」と尋ねると、荒川会長は「デビューから18年目を迎えるが今でも難しいんです。結構身を削って作っていますね」と答えた。

「身を削るって大きな言葉ですが、どんなところが一番大変なんですか?」という質問に対して、荒川会長は「やっぱり色と粒の大きさ、糖度、3つ揃えるのって難しいんです、高いレベルで。その辺やっぱり苦労しますね」と、栽培の難しさを語ってくれた。
奇跡の果実の真の味わい

彦摩呂さんに食べてもらうと言う話しを聞いて荒川さんは「そうですね…まあ見たまんま、ルビーロマンの魅力にひかれて、そのまま召し上がって欲しい」と提案。「直感でのコメントをお願いします」とのこと。

パティスリー&パーラーHorita 205の店内で、いよいよ彦摩呂さんがルビーロマンを食べる時が来た。
皮を剥いたルビーロマンを一粒口に入れた彦摩呂さんは、一瞬言葉を失った後、「甘い!めちゃくちゃ甘い!びっくりするぐらい糖度が相当高い」と声を上げた。

「果汁がじゅわって、もうぶどうのドリンクバー、飲み放題や!」

その後、彦摩呂さんはルビーロマンを使ったスイーツも堪能。

ルビーロマンのプリンアラモード。中にはルビーロマンのジュレ、プリンの上にはルビーロマンのソルベ、そしてルビーロマンのソースと、贅沢な一品に舌鼓を打った。

「濃厚なこのぶどう本来の甘みがこのソルベの中とソースに込められていて、むちゃくちゃ美味しいね」

このスイーツは1880円と、高級ぶどうを使ったものとしては驚くほどリーズナブル。「高級なルビーロマンを皆様に是非味わっていただきたい」という店の思いが込められているそうだ。

石川の誇りを全国へ
開発者と生産者の情熱と努力が生み出した奇跡の果実、ルビーロマン。今年も1房100万円の値をつけ、日本で最も高級なブドウと呼ばれている。

彦摩呂さんは全国の視聴者に向けて「石川の皆さん、もう本当に大変な暗いニュースが多い中、このルビーロマンを食べて笑顔になって幸せになって乗り切りましょう。皆さん、是非とも食べてね~!」と呼びかけた。

ルビーロマンのスイーツフェアは、8月22日から9月7日まで、県内33カ所、さらには首都圏8カ所、関西5カ所で開催される。

石川県が育んだ「食べる宝石」の魅力を、是非味わってみてはいかがだろうか。

(石川テレビ)