これは意外と簡単です。動物病院で処方される「ノミ・マダニの駆除薬」を定期的に投与してあげればいいのです。

駆除薬には、おやつのように食べさせるタイプの経口薬と、首元や背中に薬を垂らすタイプのスポット剤の二種類があります。用法用量をきちんと守っていれば、ペットの健康にも害はありません。

口や肛門まわりが狙われやすい(画像はイメージ)
口や肛門まわりが狙われやすい(画像はイメージ)

駆除薬を投与していないペットの場合、マダニは毛に被われた部分を避けて、口や肛門のまわりなど柔らかい部分を狙って噛んできます。もし血を吸ったマダニがペットにへばりついているのを発見した場合は、人間の時と同様に、無理に引っ張って剥がそうとはせずに、獣医師に診せて取ってもらいましょう。

吸血後のタカサゴキララマダニ雌成虫(画像提供:国立健康危機管理研究機構)
吸血後のタカサゴキララマダニ雌成虫(画像提供:国立健康危機管理研究機構)

動物病院に行くのは面倒だし、お金もかかるからと、ペットのマダニ予防にあまり関心を示さない飼い主さんもなかにはいます。でも、マダニからペットを守るということは、家族の一員である犬や猫の寿命を延ばすことに繋がるだけでなく、最終的には飼い主自身の感染予防にもつながります、それを思えば、賢い投資といえるのではないでしょうか。

以上、マダニが媒介する感染症SFTSについてお話ししてきましたが、いかがでしたか?

感染症の予防に最も必要なのは「知識」だと私は思っています。身体に見たことがないほくろのようなものがあったら、それはマダニの可能性が高い、犬や猫もSFTSに感染し、体液に触れると人間も感染することがある、といったことを事前に知っておくだけで感染や重症化のリスクは減らせるはずです。この記事を記憶の片隅に留めておいていただければ幸いです。

■マダニとSFTSの基礎知識は前編

足立雅也(あだち・まさや)
害虫駆除や鳥獣対策を手掛ける「808シティ」代表取締役社長。

構成=中村宏覚

足立雅也
足立雅也

害虫駆除や鳥獣対策を手掛ける「808シティ」代表取締役社長。大手害虫駆除専門チェーン店勤務中に全国コンクールで優勝。その後、業務用殺虫剤、噴霧器を販売する商社に転職。蚊やマダニに対する殺虫剤効力評価試験に協力する。宿泊関連業界、殺虫剤メーカーと協力し、トコジラミ駆除方法を研究し、講演や執筆にて全国に広める。独立後、自ら現場作業をする傍ら、数社の技術指導を行う。