<大量の漁網が漂流しており、ウミガメが引っかかっているとの通報を受け、巡視艇「はやぐも」を発動。ウミガメを無事救助し、航行の妨げとなる漁網も回収しました>

第7管区海上保安本部が、玄界灘の対馬沖でのウミガメ救助の様子をSNSに投稿し、約81万再生を超える注目を集めている。ウミガメ救助にみる深刻な海洋汚染の現実とは。

「ウミガメを救助せよ」巡視艇発動

2025年7月22日。第7管区海上保安本部の比田勝海上保安署(長崎・対馬市)に、漁師の男性から、「舟志湾内に大量の漁網が漂流しており、ウミガメが引っかかって、もがいている。海保さんでどうにかできないか」との通報があった。

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比田勝海上保安署は、韓国に最も近い海上保安署で、普段は、国境警備や外国漁船の監視、取り締まりに取り組んでいる。連絡を受け、第7管区海上保安本部が、救助を決めた。

現地に向かったのは、30メートル型巡視艇「はやぐも」(総トン数100トン)。ウミガメが見つかったのは、対馬市の舟志湾沖、尉殿埼灯台の南東約7kmの地点で、巡視艇が到着すると、全長1メートルほどのウミガメが漁網に絡まり、抜け出せなくなっていた。

海上保安官が、ボートに乗り、「暴れるな、暴れるな。帰してやるから」と声を掛けながらウミガメに近づいていく。ナイフで漁具を切り離そうとするが、網は思いのほかウミガメの体に複雑に絡まっていた。海上保安官は、ウミガメが暴れる中、絡まった網をナイフで慎重に外していく。

そして、遂に、網が切れた瞬間、巡視艇「はやぐも」の主任航海士・大谷友介さんが、「おし!バイバイ!」と声を掛ける。するとウミガメは、ゆっくりと海の中に消えて行った。大谷さんは、「嬉しかったです。素直に。保護する必要もなく逃げて行ったので。今後、救助したカメが、また次の世代を繋いで行ってくれるでしょう」と笑顔で語った。

この救助の映像が、第7管区海上保安本部の公式Xに投稿されると、81万回以上再生され、大きな反響を呼んだのだ。

81万再生超の反響
81万再生超の反響

深刻化する「ゴーストギア」問題

ウミガメを苦しめていたのは、海に放置された漁網だった。海に流出して放置されたロープ、ブイなどの漁具は、“ゴーストギア(幽霊漁具)”などと呼ばれ、海洋生態系や漁業資源に悪影響を与えることが指摘されている。故意に捨てたのではなく、台風などで流されて結果的にゴーストギアになってしまう場合もあるという。

大量にごみが絡まり、数メートルもある大きなゴーストギアが水中に漂うこともある。こうした漁具は、ウミガメや魚の体に絡まるだけでなく、海の生き物が誤って食べてしまう被害もあるのだ。また、船舶の航行への邪魔になり、海難事故が発生する危険性も高まる。海洋プラスチックごみの約1割は、捨てられたり台風などの自然現象により流出したゴーストギアだと推定されている。

巡視艇「はやぐも」の主任航海士・大谷さんは、「海洋生物に与える影響を考えて、ゴーストギアとならないよう適切に管理することが重要。1人1人に環境問題を考えていただき取り組んでもらえれば」と広く注意を促している。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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