佐賀県警科捜研の不正なDNA鑑定問題で県議会は実際の現場を視察した。科捜研は再鑑定などを含め内部での調査は「し尽くした」と説明。一方、県警本部長は「第三者による調査は必要ない」との考えを繰り返した。
不正が行われた科捜研の現場を視察
佐賀県警の科捜研に勤務していた40代の元男性職員が、7年間で合わせて130件の不正なDNA鑑定を行っていた問題で、佐賀県議会の総務常任委員会の10人は9月26日、県警察本部を訪れ、不正が行われた科捜研の現場を視察した。

委員会の議員は、血痕が人のものであるかなどの検査をする「法医鑑定室」や、鑑定のためにDNAを増幅させる「PCR室」など科捜研の8つの部屋を視察した。
内部での調査は「し尽くした」
科捜研の桒原恭子所長は、確認された130件の不正のうち124件の再鑑定の結果などを踏まえ、内部での調査は「し尽くした」と説明した。

鑑識課長兼科学捜査研究所長 桒原恭子警視:
残っている資料を再鑑定する。そこまでやりまして調査はし尽くしたと考えている

この問題では、書類送検された元職員が不正の動機について「上司に対し、自分の仕事ぶりを良く見せたかった」と供述している。

視察した議員からは「組織の改善」を求める声が上がり、科捜研の桒原所長は、「どこに向かって我々は仕事をしているのか、指導・共有を我々も含めてやっていきたい」と答えた。
本部長「深くお詫び申し上げます」
一方、県警の福田英之本部長と樋口勝馬刑事部長の2人は9月29日、記者会見を行い陳謝した。

佐賀県警 福田英之本部長:
県警察に対する県民の信頼、警察活動への信頼を大きく損なうものであり、重く受け止めており、県警察の責任者として深くお詫び申し上げます

佐賀県警 樋口勝馬刑事部長:
刑事部門の責任者として深くお詫び申し上げます
「県公安委員会が第三者の立場」
この問題では、県弁護士会などから第三者委員会による調査を求める声が上がっている。
会見は異例の3時間に渡って行われたが、福田本部長はこれまで同様「県公安委員会が第三者の立場である」などとして「必要ない」との見解を繰り返した。

佐賀県警 福田英之本部長:
具体的な捜査手法に関するものも多く含みますので、こういったことを踏まえますと、法令に基づいて、守秘義務が課されると共に、第三者性を有する機関である公安委員会において、こういった機微な事項を含む内容が確認されるということが、制度的にも実態的にも適切であると考えています

県警は再発防止策として、上司が鑑定に立ち合いチェック体制を強化するほか、警察庁など外部からの業務指導を行い、これまで6人だった鑑定の担当者を来年から1人増やすとしている。
“内部調査”で信頼回復できるのか
また、9月29日付けで佐賀県公安委員会もコメントを公表。「鑑定業務の信頼性を大きく損ない、県民の警察に対する信頼を大きく失墜させた」として、県警に対し調査体制や再発防止の徹底を強く求めた。

警察の科捜研という密室の中で起きた不正に対して、「第三者による調査が不要」だと判断するのであれば、どのようにして信頼回復につなげるのだろうか。「内部で調査をし尽くした」といっても、外部の人の納得は得られにくいのではないか。
問題解決への道筋は見えてこない。