出汁をたっぷり含んだ柔らかい麺が特徴の福岡のうどん。いま全国で、快進撃を続けている。

次々に東京進出する福岡うどん

2024年末に千葉に出店したのを皮切りに埼玉、東京と店舗を拡大し勢いに乗るのは、北九州発祥の『資さんうどん』。

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カラッと揚がったごぼう天と甘辛い肉が乗った『肉ごぼ天うどん』を筆頭に、もちもちの麺とサバや昆布などから丁寧に取った出汁が人気となり現在、全国で80店舗以上を展開している。

そして創業74年の老舗『因幡うどん』も4月、初の県外進出を果たした。場所は東京の最先端の街、原宿だ。

かき揚げスタイルのごぼう天が名物の因幡うどんだが、東京都民の反応は「初めて食べました。柔らかい麺は“あり”ですね」と話す女性や「鍋の後のシメみたいな感じでスルスルって食べられます。東京のうどん界に一石を投じる新しい風が吹いたのでは」と話す男性など、概ね好評だ。

さらに福岡で定番の『ウエスト』は東京・町田市や千葉県内に店舗を構えているほか、同じく福岡の『うちだ屋』も全国展開を目指す方針だ。

こうした“福岡うどんブーム”が巻き起こりつつある現状に福岡県民も「福岡のうどんが全国に知られていっているのは嬉しいですね」と話す女性や「柔らかいうどんが認められてるのが、すごくいい」と話す女性など、前向きに受け止めているようだ。

そうしたなか、聞こえてきたのが「資さん、出店して凄い人気ですけど『牧のうどん』も出店して欲しいなと思います」(男性)という声だ。

資さんうどん、ウエストと並び福岡の“3大うどん”と称されることもある『牧のうどん』の動向を気にしているようだ。

牧のうどんの“鉄の掟”とは?

『牧の』と県民に親しまれている牧のうどん。麺がどんどんスープを吸うためヤカンに入ったスープを継ぎ足しながら食べるのが、“牧の流”だ。糸島市の本店を訪ねると平日にもかかわらず混雑していた。

「出汁は、牧のうどんが一番おいしいですよ」(男性)と地元で高い人気が続く牧のうどんだが、“福岡3大うどん”のなかでは唯一、関東進出などの目立った動きが見えない。

牧のうどんの畑中俊弘社長を直撃すると「今後、東京進出は…、ないですね。誘いはありますけど断っています」と福岡のうどんチェーンが関東で受け入れられるなか、牧のうどんにも誘いはあるものの東京進出は「ない」と社長は断言した。

その背景には、牧のうどんの“鉄の掟”があるのだという。

「出汁、ごぼう天、エビは本店のセンターで作ります。牧のうどんが、本店から1時間30分で出汁を運べるところでしか出店していない」

うどんの“命”はスープにあり

牧のうどんのルーツは、戦後まもなく創業した畑中製麺所。その後、1973年に糸島市加布里に1号店をオープンさせた。創業当時から守られてきたのが出汁の劣化を防げる範囲での出店。現在は福岡と佐賀を中心に18店舗を構えているが全て、出汁を製造する本店から1時間半以内の距離にある。

6時間かけて仕込むこだわりの出汁
6時間かけて仕込むこだわりの出汁

早朝から6時間かけて仕込むこだわりの出汁。高級な利尻昆布を1カ月に約3トンも使用している。その量は出汁用利尻昆布の国内全体の消費量のうち7%を占めるほどだ。

「出汁昆布の使用料は日本一だと聞いている。うちはみりん、砂糖を使っていないので、それは昆布に由来するうまみだと思います」と畑中社長は語る。

そして、他の地域に出店しない理由は他にもある。「売上に締める材料費は4割を超えている。よほどの高級店だと別ですが、ラーメン、うどんの形態でそこまでの原価率を使っている店舗はない」と畑中社長。

物価高でも安くおなかいっぱいに

昆布など仕入れの値段が上がるなか、一般的なうどん店の3倍ほどの客を受け入れることで何とか低価格を実現している。

「一部、赤字店舗もある。でもトータルで儲かっているからいいということで、いまの値段でやっている。これがフランチャイズで、1店舗、1店舗、独立で生産性を出すとなると、いまの値段ではやっていけない」

東京進出の拡大戦略ではなく、今後も地域に根ざした経営を続ける牧のうどん。そこには出汁や価格を巡る牧のうどんの徹底したお客様ファーストの姿勢があった。

(テレビ西日本)

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