YouTubeに開設されている動画チャンネル。高齢者向けとする複数のテーマが並ぶなか「7月1日から開始、バス代0円」というタイトルの動画がある。その動画は、でたらめな内容なのだ。
一部に中国語とみられる表記
『衝撃、7月1日から開始。高齢者交通無償化の全貌。政府と地方自治体が協力し65歳以上の高齢者にバス料金を全額無料で支援するものです』

投稿されているのは、ニセ情報の動画。静止画像に日本語の音声と字幕で「来月から全国各地で高齢者のバス料金が無料になる」などとうたっている。

『福岡県は都市(=今年)下半期から70歳以上の高齢者全員に市バスを無料で提供する政策を拡大思考(=施行)します。これで福岡県の高齢者もバスに乗る時に1千(=1銭)も払わずに気軽に移動できるようになるのです』と誤字脱字の多い文言が並ぶ。

さらに今回、問題視されている動画チャンネルをよく見ると、冷房の「房」や国税庁の「税」など中国語とみられる表記が一部にあるなど不自然な点も多いのだ。

対象となる自治体として東京、大阪のほか福岡も挙げられているが、そうした事実は全くない。さらに動画には、事前申請など手続きに関する内容もあり、一見してニセ動画とは分かりにくいのも特徴となっている。
市役所に申請に訪れる高齢者も
動画の一部を見た高齢者は「高齢者に無料バス券を作るっていうことでしょ? ウソの動画? 困りますよね。変な希望を持たせたらいけないよね」と話す。

また別の高齢者は「私たちグランドパス(高齢者の割引定期券)を持っているから。どうなんですかね、無料って。私の上の階の人も『市役所に行ってくる』と言っていました」と話すなど、一様に混乱している状況を口にする。

福岡市も対象とされている高齢者のバス無料のニセ動画。福岡市の高齢福祉課課長の久田惣介さんは「誤った内容を、手続きまで含めて案内している。大変悪質なものかなと感じている」と憤りを隠さない。動画の再生回数は25万回を数え、ニセ動画の拡散による現場の混乱も懸念されている。

久田課長は「電話での問い合わせが主だが、窓口にまでご足労頂くような事案にもなっている。説明して納得頂ける事例もあれば、動画の間違った情報を信じてしまい説明しても理解して頂けないような事案もある」と困惑の表情だ。

「情報を鵜呑みにしてはダメ」
福岡市はウソの情報だととしてホームページ上で注意を呼びかけるほか動画サイトの運営会社に削除を依頼している。

ニセの情報に惑わされないようにするにはどうすれば良いのか。見極めのポイントのひとつとして、発信元を確認することが重要だと専門家は指摘する。国立情報学研究所教授の越前功さんは「このチャンネルが、どんなチャンネルなのか。公の組織ではない、法的機関ではない、自治体ではない情報を鵜呑みにしてはダメ。チャンネルの発信元が信頼できる組織なのか。ここの情報だけでなくほかの情報も調べて判断するということ」と話す。

バス無料を謳ったニセ動画、一体、誰が何の目的で投稿したのか。動画を閲覧する側の冷静な判断も必要となってくる。
(テレビ西日本)