コロナ禍を機に全国へ広がったアウトドアブームの恩恵を受け、地域観光の柱として機能してきた2つのキャンプ場が、アウトドアシーズンを目前にして突然の閉鎖に追い込まれた。

鳥取・琴浦町「一向平キャンプ場」(左)南部町・「緑水湖オートキャンプ場」(右)
鳥取・琴浦町「一向平キャンプ場」(左)南部町・「緑水湖オートキャンプ場」(右)
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鳥取県南部町の「緑水湖(りょくすいこ)オートキャンプ場」と琴浦町の「一向平(いっこうがなる)キャンプ場」――

いずれも指定管理者として運営を担っていた米子市の「スマイルキューブ」が、5月に入って破産手続きを開始し、5月7日から営業を休止している。国立公園内のサウナ施設として注目を集めていた一向平では、4月に新たなスチームサウナを導入したばかりだった。両町とも再開の見通しは立っておらず、「1日でも早い再開をしたい」という言葉だけが残されている。

「この先に立ち入ることができない」――突然貼り出された休止の張り紙

「営業休止のお知らせ」が貼り出し
「営業休止のお知らせ」が貼り出し

鳥取県西部・南部町に位置する緑水湖オートキャンプ場。その入り口には5月7日以降、「営業休止のお知らせ」が貼り出されている。現地を訪れた記者が「この先がキャンプ場ですが、立ち入ることが出来なくなっています」と伝えたように、施設はひっそりと封鎖された状態が続いている。

県中部の琴浦町にある一向平キャンプ場も同様だ。「シーズン到来という中ですが閉鎖されています」という現地からの報告が、その光景の異様さを端的に物語っている。

突然の閉鎖に利用者も困惑
突然の閉鎖に利用者も困惑

2つの施設のホームページには、まったく同じ文面の「営業休止のお知らせ」が掲載されている。いずれも、米子市に本社を置き、ウエディング事業なども手掛ける「スマイルキューブ」が指定管理者として運営にあたっていた施設だ。

指定管理者の経営不振が引き金に
指定管理者の経営不振が引き金に

民間の調査会社の情報によると、スマイルキューブは本業であるウエディング事業の不振に加え、キャンプ場の利用客も減少し、多額の負債を抱えた末に破産手続きへと追い込まれた。5月に入って手続きを開始し、施設の営業は5月7日から停止している。

1997年開設、ピーク時には年3500人――緑水湖キャンプ場の歩みと凋落

長年親しまれたキャンプ場も利用低迷
長年親しまれたキャンプ場も利用低迷

緑水湖オートキャンプ場は1997年に開設された。手ぶらでも気軽にキャンプを楽しめる施設として長年にわたって地域の人々や観光客に親しまれ、ピーク時の2022年度には年間3500人あまりの利用があった施設だ。

しかし近年、利用客数は減少傾向に転じていた。2019年からこの施設の指定管理を引き受けたスマイルキューブは、施設のリニューアルなどを通じて利用回復を図ったが、キャンプブームが下火になった影響などから、2023年以降は赤字経営が続く状況に陥っていた。

そして2026年4月30日、南部町はスマイルキューブから「閉鎖する」という連絡を突然受けた。まさに青天の霹靂であった。

「把握できていなかった点は反省」――議会で問われた町の責任

2026年4月30日 南部町議会
2026年4月30日 南部町議会

事態を受け、南部町の陶山町長は5月19日、議会に対して閉鎖に至った経緯と現状を説明した。「スマイルキューブが破産手続きに入るということで、その対応に苦慮している。急ぎ今後の対応をしてまいりたい」という言葉からは、突然の事態への困惑がにじみ出ていた。

しかし、議会の反応は厳しかった。ある議員は「去年の時点で赤字の状況でありながら、結局は指定管理をお願いしたのは町としてどういう判断だったのか」と執行部を追及した。これに対して執行部は「少し経営状況が悪くなっていたということは把握していたけれども、きちんと確認できていなかった点は反省しています」と述べるにとどまった。

突然の事態に困惑がにじみ出る
突然の事態に困惑がにじみ出る

さらに踏み込んだ指摘も出た。キャンプ場単体の経営悪化だけでなく、スマイルキューブ本体の財務状況について町が把握していなかったことへの疑問だ。

「キャンプ場の赤字ではなくて、ほかの業種が苦しかったのでは。倒産という話があったのではないか」という議員の問いに対し、南部町の宮永副町長は「(破産理由の)最終的な結論を伺っていないので、我々としても推測の域を出ないので、このあたりでご勘弁いただきたい」と答えるにとどまった。

指定管理者制度のもとでは、運営を民間事業者に委ねることで行政コストの削減や民間ノウハウの活用が期待される一方、委託先の経営状態を定期的かつ詳細に把握することが自治体には求められる。今回の件は、その監視機能が十分に働いていなかったという「見立ての甘さ」を浮き彫りにした格好だ。

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陶山町長は「1日でも早い再開をしたいと願っている。方法は今後考えていきたい。指定管理といえども行政の責任は逃れられませんので、今後は再発防止という観点から点検していきたい」と述べた。町は指定管理の取り消し手続きを進めると同時に、指定管理以外の運営方法がないかについても模索しているが、具体的な目途は現時点では立っていない。

サウナで人気急上昇――一向平では4月に新設備を導入したばかり

2020年撮影 一向平キャンプ場(鳥取・琴浦町)
2020年撮影 一向平キャンプ場(鳥取・琴浦町)

一方、琴浦町の一向平キャンプ場の状況はさらに皮肉な側面を持っている。国立公園の中に位置するこの施設では、スマイルキューブの関連会社が6年前からキャンプ場の運営にあわせてサウナ設備を導入していた。

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サウナブームの波にも乗り、設備を導入した初年度の2020年度には前年比で2倍近い2300人余りが利用。その後も毎年1000人近くが訪れる人気施設として定着していた。

琴浦町商工観光課の松田大介主任は「キャンプ場ということはもちろんだが、国立公園の中にあるサウナということでかなり人気になって、町のほうでも整備を進めていた」と語っており、町にとっても重要な観光資源として位置づけられていたことがわかる。

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そして2026年4月、一向平キャンプ場には新たに「スチームサウナ」が導入され、新しい魅力が加わったばかりだった。まさにそのタイミングで、5月1日に施設を管理していたスマイルキューブの担当者から「6日で営業を停止する」という突然の報告が琴浦町に入った。

松田主任は「びっくりして、どうなるんだろうと不安も出てきたところです」と率直な心境を吐露した。

琴浦町は定期的に事業者の経営状態などをヒアリングしていたとしているが、「事業停止にいたるとは考えていなかった」という。松田主任は「こちらとしても整理の段階というところで見通しが立っていないのが正直なところです」と語っており、町側もいまだ対応の方向性を模索している段階だ。

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町は5月20日に開かれる町議会で閉鎖の経緯を報告し、今後は新たな指定管理者の募集も含めてキャンプ場の再開に向けた協議を進めていく方針を示している。

地域の観光資源として長年親しまれてきた施設が、1日でも早く再び賑わいを取り戻せるかどうか――両町の対応が問われている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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