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プレスリリース配信元:認定特定非営利活動法人カタリバ
~NPOカタリバ、校則見直し(ルールメイキング)に取り組む学校の生徒と教員232名の実態調査を実施~
文部科学省は2022年、教員用の生徒指導の手引き「生徒指導提要」を改訂し、子どもの声を生かして校則を見直すよう求めました。また国連の「子どもの権利条約」を踏まえ、23年には子どもの意見表明の権利を明文化した「こども基本法」も施行されました。こうした流れを受け、全国で生徒が校則について考える学校が増えています。
カタリバでは2019年から、校則を起点に対話をしながら生徒主体の学校をつくる「みんなのルールメイキング」プロジェクトに取り組んでいます。全国で校則見直しの取り組みが進む中、その取り組みの進度はさまざまです。このたび、プロジェクトのパートナー(対話的な校則・ルールの見直しに取り組んでいる/取り組みを検討している)である全国の学校の先生と生徒232名を対象に「何が校則見直しの進度の差を分けるのか?」その実態を明らかにすべく調査を実施しました。
【この調査でわかったこと】
●「生徒の意見を聞く場が設けられていると感じる」と回答した生徒は約6割
●「生徒の意見を聞く場がある」実感があるほど校則見直しが進む傾向
●実際に「機会や場」が設けられていることにより生徒の「意見表明の機会がある」実感が育まれる
●先生の9割以上が「校則見直しのプロセスに生徒の意見を取り入れるべき」
●一方で、先生視点では機会や場の設定に至るまでにある壁や難しさも
「生徒の意見を聞く場が設けられていると感じる」と回答した生徒は約6割
「校則見直しのプロセスに生徒の意見をどの程度取り入れるべきだと思いますか?」という設問に対して、調査に参加した生徒の全員が「校則見直しに生徒の意見を反映するべき」と回答しました(積極的に取り入れるべき73.4%+ある程度取り入れるべき26.6%)。一方で、「校則見直しにおいて、生徒の意見を聞く場は十分に設けられていると感じますか?」とたずねると、「感じる」と回答したのは全体の約6割でした(とても感じる22.6%+まあ感じる35.5%)。

▶「あまり感じない」「まったく感じない」と回答した生徒の声
●校則を変えるためのチームがあるだけで個人個人が校則変更を言える立場ではありません。生徒が考えた校則など提案をいう場面が教員などとの面談しかありません。
●Google formを通して生徒の意見を聞いてることになってるけど、実際答えてくれている人も少ないし、そのformを投げかける回数も少ないから。そしてそこで出た意見を先生に何らかの形で伝えたとしても大人の事情で却下されることもあるから。
●校則検討委員会というもので生徒会役員の意見が反映されているが、それ以外の生徒の意見が反映されにくい。
●始めるにあたって何から始めればいいのか分からないから
校則見直しが進んでいる学校では「生徒の意見を聞く場がある」実感が高い傾向
また、校則見直しの進み具合を分ける要因について分析したところ、意見表明の機会の有無や程度が校則見直しの進み具合に影響を与える可能性があることがわかりました。以下のグラフからも、校則見直しが進んでいる学校では、意見を聞く場が十分に設けられていると感じる割合が増加する傾向があることがわかります。
*多項ロジスティック回帰分析を行った結果、統計的有意(p<.05)
多様な機会や場が生徒の「意見表明の機会がある」実感につながる
生徒の「意見を聞く場が設けられている」という実感は、具体的にどのようなことによって育まれるのか。「設けられていると感じる/感じない」その回答理由を詳しく見ていくと、実際に多様な形で意見を聞く「機会や場」というものの存在が浮かび上がってきました。
上記にある通り、さまざまな形で生徒の意見を聞く機会や場が設けられている場合には「意見表明の機会がある」と感じられており、逆にそのような機会がない場合は「意見表明の機会がない」と感じられています。校則見直しのどの段階においても、場や機会があることで、生徒は「意見を表明する機会がある」と認識する傾向が見られるということが明らかになりました。
先生の9割以上が「校則見直しのプロセスに生徒の意見を取り入れるべき」
先生側の結果を見てみると、「校則見直しのプロセスに生徒の意見をどの程度取り入れるべきだと思いますか?」という設問に対しては、本調査に参加した先生の9割以上が「生徒の意見を取り入れるべき」と回答しています。
一方で、先生視点では機会や場の設定に至るまでにある壁や難しさも
また、先生の自由記述回答を詳しく見てみると、校則見直しに実際に取り組んでいくことや、生徒の意見を聞く場や機会を持つというステップに至るまでにある、さまざまな壁や難しさが垣間見えます。ーーー
・生徒や新しく異動等で来た先生が校則内容を把握していないという問題が起きています。
・私が担当を外れて以降、見直しの傾向から離れていきました。生徒・教員へのアンケートも取らなくなっており、とても残念です。
・教員には「管理しないと不安」「管理することが教育である」という考えの方と、「生徒の主体性を重んじるべき」という方と、「勝手にやってくれ」という方が存在。
・『荒れ』たらどうするのかと不安感から昭和の管理教育から脱却できていない職員がいる。
・慣習に則った「当たり前」から離れられない。
・かなりエネルギーを使うので教員はやりたがっていない。
・生徒においては、「与えられる教育」に慣れてしまっていて、自分で考えることが面倒と考えている。
・自分の見える範囲でしか世界を見ることができていない生徒、学校の評判などを気にする生徒、ルールメイキングには興味がない生徒、アンケートでたくさん意見を聞かれすぎてうんざりしている生徒など、さまざま。
ーーー
「人員配置や異動の問題」「風紀上の懸念」「慣習」学校のシステムや根付いている文化など、生徒の声を聞く場を設けるということが単純な話ではないという実態が浮き彫りになっています。
専門家考察:意見が聴かれる学校づくりとは~こども基本法施行からの2年をふりかえって~
こども基本法が2023年4月に施行されてから、2年余りが経ちます。学校において、生徒は「自分たちの意見が聴いてもらえる」と感じられているのでしょうか。また、生徒が「意見が聴いてもらえる」と感じられるためには、何が大切なのでしょうか。生徒へのアンケートでは、「校則見直しにおいて、生徒の意見を聞く場は十分に設けられていると感じますか?」という設問に、肯定的な回答をした生徒は約6割いました。むろんこの調査は、「みんなのルールメイキングプロジェクト」のパートナー校を対象としているため、この結果が日本の中学校・高校の一般的な実態をそのまま反映しているわけではないことに留意が必要ですが、少なくともそうした学校が出てきていることは、希望がもてる結果だといえるでしょう。
しかしその反面、こうした学校であっても、半数近くの生徒にとっては、意見を聴く機会が十分でないと感じていたり、機会があったとしても課題を感じていたりするという実態もうかがえます。先ほどの設問で、意見を聴く機会が十分でないと答えた生徒の声からは、生徒の意見に対する大人側の応答が乏しいことや、提案が学校側の判断で覆ってしまうことへの不満が垣間見えます。また、生徒会役員など中心的に活動する生徒以外の一般生徒が、意見を届けることが難しい学校もあるようです。
これらはいずれも重要な課題といえます。すなわち、生徒が「自分たちの意見が聴いてもらえている」と思えるためには、単に意見が「言える」機会があれば良いのではなく、それを「聴く」大人がしっかりと受け止めて、またその意見を十分に考慮し、応答していくことが大切です。もし学校側としては生徒の意見を反映することが難しいという判断になったとしても、なぜそうせざるを得ないのか、生徒に丁寧に説明するとともに、引き続き一緒に考えていこうという姿勢を示していくことが、生徒と教員の信頼関係にもつながります。加えて、一部の生徒だけでなく、多くの生徒が意見を届けられるようにするためにも、意見を聴く多様な場や仕組みを設けて、それらを組み合わせながら、多くの生徒が参加できる環境を整えていくことも重要といえます。
とはいえ、先生方の声にもみられたように、現実には様々な障壁もあります。はじめから完璧を目指すのではなく、まずはできることから、できる形から始めてみることも大切です。一歩踏み出し、取り組みを進めていく中で、「もっとこうしたいね」「こうできたらいいね」という対話を生徒とも、また先生方の間でも重ねていくことが、より良い校則見直しや学校づくりにつながるのだと思います。
また、一歩目を踏み出すことが困難な学校や、取り組みを始めたものの思うように進まず行き詰ってしまっている学校は、カタリバさんをはじめとした外部の力を借りることも、打開の一助になるかもしれません。子どもと大人とが一緒に学校をつくるチャレンジを支える環境づくりもまた、求められているのではないでしょうか。

筑波大学人間系 助教 古田雄一氏筑波大学人間系助教。博士(教育学)。大阪国際大学短期大学部専任講師、 同准教授を経て、 現職。認定 NPO 法人カタリバ 「みんなのルールメイキングプロジェクト」 調査研究・実施協力。 主著に『現代アメリカ貧困地域の市民性教育改革』(東信堂、2021 年)、『校則が変わる、生徒が変わる、 学校が変わる―みんなのルールメイキングプロジェクト』(学事出版、2022年、共編著)、『世界に学ぶ主権者教育の最前線』(学事出版、2023 年、共著)など。
本調査の詳細レポートはこちら:https://www.katariba.or.jp/wp-content/uploads/2025/06/1b3ee44c21c7c21eb1957fec7073fa7f.pdf
調査概要
調査期間:2024/11/06~2025/02/10調査方法:質問紙調査(オンライン)
調査対象:みんなのルールメイキングプロジェクトのパートナー校の中学校・高校の教員及び生徒
調査人数:232名(教員108名、児童生徒124名)
みんなのルールメイキングで行っている教員向け支援
1.:学校の教員向けコミュニティ「ルールメイキング・パートナー」ルールメイキング・パートナーは、生徒主体の校則見直しや学校づくりをはじめたい、もしくは既に実践している小・中・高校の先生が無料で参加できるコミュニティです。登録は無料・学校承認は不要で、先生個人での申込みが可能です。全国の学校の事例や取り組みを知ることができるほか、ルールメイキング事務局との無料相談や、学校の先生や生徒が参加できる勉強会・交流会などをご案内することができます。
▽ルールメイキング・パートナーの詳細・登録はこちら:https://rulemaking.jp/partner-lp/
2.:教員向け補助資料『児童・生徒とともにつくる学校 POINT BOOK』を制作しました(2025年6月公開)
認定NPOカタリバ みんなのルールメイキングでは、教員向けの実践ガイド「児童・生徒とともにつくる学校 POINT BOOK」を制作し、公開しました。
本書は、「児童・生徒の意見を取り入れた実践をやってみたいが、何から取り組んだらよいのだろうか」といった現場の教員から実際に相談が寄せられた場面を取り上げ、大切にしておきたい観点を紹介しています。筑波大学人間系 助教の古田雄一氏や工学院大学教育推進機構 教授の安部芳絵氏に監修いただきました。みんなのルールメイキング公式HPから詳細をご覧いただけます。
▽『児童・生徒とともにつくる学校 POINT BOOK』詳細・ダウンロードはこちら:https://rulemaking.jp/news/4029/
【団体紹介】認定特定非営利活動法人カタリバ
どんな環境に生まれ育った10代も、未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し、2001年から活動する教育NPOです。高校への出張授業プログラムから始まり、2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供するなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組んでいます。設立 : 2001年11月1日
代表 : 代表理事 今村久美
本部所在地 : 東京都中野区中野5-15‐2
事業内容 : 高校生へのキャリア学習・プロジェクト学習プログラム提供(全国)/被災地の放課後学校の運営(岩手県大槌町・福島県広野町)/災害緊急支援(全国)/地域に密着した教育支援(東京都文京区・島根県雲南市)/家庭の事情で居場所を求めている子どもに対する支援(東京都足立区)/外国ルーツの高校生支援(東京都)/不登校児童・生徒に対する支援(島根県雲南市・全国)/子どもの居場所立ち上げ支援(全国)
URL: https://www.katariba.or.jp
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