響灘、玄界灘、周防灘の3つの海に囲まれ、すしネタの宝庫とされる北九州市。2025年4月、北九州市は地域のすし文化を国の内外に発信する『すしの都課』を新設した。そして今、すしを巡る新たな動きが…。
すしの王者 vs すしネタの宝庫
「すしを入口にして、さまざまな北九州市の食文化の魅力を発信していきたい」と武内和久北九州市長も入れ込む『すしの都課』。全国初のすしに特化した部署の設置だ。
この動きに反応したのが、九州から遠く離れた北陸の富山県。「玄界灘でもいい魚が獲れるだろうけど、うちの方が先行していると思っている」と対抗するようなコメントを発したのは富山県の新田八朗知事だ。
富山県は、2023年から『寿司といえば、富山』と名付けたブランディングプロジェクトを推進している。なかでも富山市は1世帯あたりのすしの支出額が全国1位。日本一すし好きが集まる“すしの王者”と呼ばれる町なのだ。
そして6月12日。富山に姿を現したのは北九州市の武内市長。“すしの王者”のお膝元で、北九州市と富山県、両トップによる世界初の『すし会談』が実現した。
すし会談を1週間後に控えた日。北九州市の『すしの都課』の職員が足を運んだのは、戸畑区の名店『照寿司』。店を切り盛りするのは、3代目の渡邊貴義さん。ド派手なパフォーマンスと繊細な職人仕事で海外でも人気の有名店だ。
今回のすし会談では、北九州市と富山県が誇るすし店の味を披露することになっている。北九州の代表として白羽の矢がたったのが、照寿司。果たして当日は、どんなネタが並ぶのか。
話の“ネタ”を持参 両都市で手を“握り”
迎え撃つ富山県。立山連峰の雪解け水が流れ込む富山湾は『天然の生簀』とも呼ばれ、日本海に生息する約800種のうち500種にも及ぶ魚介類が生息している。北陸の海の幸の代表格ノドグロや富山湾の宝石とも呼ばれる白エビなど豊富な海の幸が強みだ。
「話の“ネタ”はしっかり持ってきたので、両都市でしっかり手を“握りたい”」と富山の地に降り立った武内市長。『寿司といえば、富山』のブランディングは、至る所に浸透している。ロゴマークが刻まれたラッピングバスが街なかを走り、すしネタを靴下にした『寿司そっくす』まで売られている。“すしの王者”を官民一体で体現しているのだ。
すでに『すし観光』が充実する富山県と『すしの都課』を新設し、美食の街としての地位を確立したい北九州市。いよいよ地元メディアも注目する世界初のすし会談が始まった。お互いの威信をかけた会談。果たしてどんな話のネタが飛び出したのか？
「駅にもオブジェがあって、すしの街、富山県さんの“王者の力”を肌で感じました」と武内市長。対する富山県の新田知事は「若干、2年ほど早く北九州市さんより、すしにフューチャーしたブランディングを始めたということで…」と返し、2年先輩であることを強調する。続けて「これから共に手を携えて、すし文化を全国に、世界に発信できる場に」と会談の目的があくまで連携であると語り、互いに相乗効果を生む関係を築くことを約束した。
そして始まった、すしの実食。双方自慢の職人が腕を振るう。北九州市が送り出したのは照寿司の珠玉の10貫。響灘のヤリイカや玄界灘のマアジなどだ。
アカウニを口にした新田知事は「とろりと、すーっと溶けていく、そんなクリーミーな魅力ですね」と絶賛する。
一方、富山の白エビを口にした武内市長は「富山湾の宝石といわれるだけあって、見た目は繊細だけど、口の中に入れるとふわっととろけていく。上品な味ですね」とこちらも絶賛だ。
絶品のすしの前ではみな同じ。一口、頬張れば笑顔がこぼれる。
北九州×富山×JR西日本
そして会議終盤には、双方に新幹線の駅があるJR西日本も巻き込んでの『すしのゴールデンルート』構想が議題に。北九州市･富山県･JR西日本の3者が連携することで一致した。
最初の一歩は大阪で2025年8月に、それぞれのすしを振る舞うイベントを実施する。武内市長は「ほかの地域も巻き込んで、民間企業も巻き込んで、大きな流れを作っていきたい。ブランドとして打ち立てていきたい」と熱く抱負を語った。
そして早速、会談の成果も出ている。双方の回転ずし店がコラボした食べ比べ企画の一環で、北九州市では富山県産の白エビを含む3貫を堪能できる店も登場。さらに戸畑区の照寿司は今後、富山での出店も検討していて、すし会談を契機に双方の連携はさらに活発になりそうだ。
世界に誇る食文化、すしを仲立ちにして新たな連携が決まった今回のすし会談。その展開から今後も目が離せない。
（テレビ西日本）
