咳や発熱を引き起こす「RSウイルス」。2歳までにほぼ全ての人が一度は感染し、特に生後6ヵ月未満の乳幼児が初感染した場合などは、重症化するリスクが高いとされる。福岡県では、流行期を前に予防の動きが広がっている。
RSウイルスは鼻水や発熱、咳といった症状が出る感染症で、生後6カ月未満の赤ちゃんが罹患すると肺炎を起こして重症化する危険性がある。更に症状が重くなると合併症にも注意が必要で、特に1歳以下の赤ちゃんは中耳炎の合併症がよくみられるほか、無呼吸発作や急性脳症など深刻な状態に至るケースも報告されている。
例年は秋から冬にかけて流行するが、近年は夏場にも感染者が増えている。福岡県内の定点医療機関では2025年8月25日から31日までの1週間で195件の報告があり、前の週の約1.77倍の増加となっている。

予防の基本はマスクや手洗いだが、乳幼児には難しいのが実情。そこで注目されているのが2024年1月に厚生労働省が承認した“母子免疫ワクチン”だ。

妊婦のへのワクチン接種で予防へ
福岡・那珂川市の産婦人科「マミーズクリニック ルナ」。このクリニックでは、生まれてくる赤ちゃんを守るため妊婦へのワクチン接種を積極的に勧めている。

「妊婦さんにワクチンをうつと免疫が作られて、へその緒を通して赤ちゃんに渡す。免疫を持って赤ちゃんが生まれてくるので、感染しても重症化しづらかったり罹患することそのものを予防したりする効果もあると言われている」と院長の吉冨智幸さんは話す。

“母子免疫ワクチン”『アブリスボ』は、妊娠24週から36週の妊婦が対象だが、このクリニックでは、効果が高いとされる妊娠28週から34週での接種を呼びかけている。

この日、クリニックでワクチン接種を検討しているという妊婦は、「1人目の子供が3歳の時に高熱を出し、検査をしたらRSウイルスだった。だから今回ワクチン接種するかどうか考えている」と話す。また、実際に接種したと話す妊婦は「1年間妊活しても子供ができなかったので、不妊治療に3カ月通って授かった。そういうこともあり打とうと思った」と接種を決めた理由を語る。
院長の吉冨智幸さんは、「赤ちゃんには全く針も刺さらないので安全性も高いと思う。何よりワクチンをうつことそのもののメリットがすごく高い」と“母子免疫ワクチン”の有効性を強調する。
全額自己負担 2.5万~3万円台
予防に有効なRSウイルスワクチンだが、任意接種の扱いのため費用は全額自己負担が原則だ。医療機関で異なるが2万5000円~3万円台とされていて負担の重さからためらう人もいるとみられ、今後は各自治体における助成制度の広がりなどが課題となりそうだ。
(テレビ西日本)