農林水産省は20日、備蓄米の売り渡し先の対象を外食や弁当店などに拡大し、申請の受付を始めた。また、コメの“流通改革”を推し進める小泉農水相は同日、農業界の巨大組織「JAグループ」のトップ、JA全中・山野会長と面会した。“直接対決”の行方は──。
“デカ盛りの聖地”備蓄米は「使わない」
デカ盛りの聖地と呼ばれる埼玉・川越市の飲食店「二代目蝦夷」は6月、ある決断をした。

総重量1.5kgの「からあげ焼肉丼」について、店主の岡安清純さんは「1680円から、1850円に値上げした。コメだけじゃなく、肉も、野菜も上がっているので、この金額に設定した」と話した。

“デカ盛りメニュー”を求めて連日、大人気のこの店で、1日に消費する米の量は30キロだという。

そこで「備蓄米の購入は考えていますか?」と質問すると、次の答えが返ってきた。

二代目蝦夷・岡安清純店主:
2年前、3年前のコメは“それなりのところ”があるという声も(飲食店仲間から)聞いた。値上げ前なら備蓄米を試したかったが、値上げしてしまい、客においしいものを出す気持ちでやっているので、備蓄米は使わない。
備蓄米「すき家」ゼンショーHDは購入申請せず
農林水産省は20日、備蓄米の売り渡し先の対象を外食や弁当店などに拡大し、申請の受付を始めた。

小泉農水相:
(備蓄米が)小さな店も含めて、行き渡ることもあるかもしれない。
販売期限は新米が出始める前の8月末に設定されている。

「すき家」などを運営するゼンショーホールディングスは、「売り切る約束の8月までに使うお米は確保できている」として、購入申請はしていない。

一方、ゼブンイレブンは弁当用として、3000トン分を申請したことを明らかにした。
小泉農水相とJA“浅からぬ因縁”
コメの“流通改革”を推し進める小泉農水相だが、“次の改革”に向けて20日朝、面会した相手はJA全中・山野会長だった。

農業界の巨大組織「JAグループ」のトップだ。
小泉農水相:
本日はJAグループのトップの方々から、輸出目標を含め、今後の輸出拡大に向けた取り組みについて、お話をお伺いできると聞いております。
小泉農水相とJAとは、浅からぬ因縁がある。

10年ほど前、自民党の農林部会長として“JA改革”を推進した。

中でも、JAグループの「全農」が手数料をとって農業資材の販売などを行う際、十分な価格交渉を行っていない、と苦言。
農家のコストが割高になる構造を変えるべきだと切り込んだのだ。

大幅な組織改革を求める提言をまとめた事に、JA側が猛反発。

JAたじま 尾崎代表理事組合長(当時、2016年):
「小泉進次郎というのは農協いじめをする張本人で、こんなけしからん奴をこういう場に呼んではいけない」というような意見もあったりするが…。

結局、まとめた改革案は“骨抜き”との批判も受け、当時農林部会長だった小泉農水相は「一言で言うと、『負けて勝つ』かな」と語っていた。
「東京のど真ん中に農協がビルを…」批判
それから9年、農水省のトップに立った小泉大臣は19日、JAを「農家で東京のど真ん中に農協がビルを持っていることを求めている人は誰もいないと思う」と批判した。

JA全中はシステム開発を巡り、200億円規模の損失を発生させた。東京・大手町にある、地上37階の本部ビルの一部のフロアを売却して、損失の穴埋めする考えを示している。

しかし小泉農水相は、ビルを持っていること自体を疑問視したのだ。

小泉農水相:
そもそも農協って、少しでも安いものを農家に卸すのが本分なのでは?
そういうことを問うている。
ビル売却に山野会長「長年会員の皆さん方の蓄積のもの」
そして20日、JAグループのトップと“直接対決”。

説明を聞いた小泉農水相は。「巨額赤字も出たことが、農家や組合の皆さんの負担にならないようにという話をした。ピンチをチャンスに変えていく機会に共にできれば」と話した。

一方、JAグループのトップ、JA全中・山野会長はビルの売却について「これは長年、会員の皆さん方の蓄積のものと思っているので、我々単独でできるものではない。会員の皆さんに相談申し上げたい」と述べた。

9年越しの“JA改革”は成功するのか。
小泉農水相の手腕が試される。
(「イット!」 6月20日放送より)