富山湾で今シーズン不漁が続くシロエビ。富山県射水市の新湊漁港では今月10日から22日まで13日間の休漁を決定した。シロエビを名物にしてきた地元道の駅では、シロエビバーガーの値上げを余儀なくされる一方、「いみずサクラマス」を使った新メニューの開発で苦境を乗り切ろうとしている。
3回目の休漁で「富山湾の宝石」に影響広がる

「仕入れは厳しい状況。シロエビを切らさないよう確保してもらい、なんとかやりくりしている」と語るのは、「道の駅カモンパーク新湊」の片田博料理長だ。
シロエビを使った料理や土産物が並ぶ同道の駅では、名物の「シロエビバーガー」やかき揚丼など様々なシロエビ料理を提供している。多い日には1日で4.5キロものシロエビを消費する人気スポットだ。

しかし現在、冷凍庫に保管されているシロエビはわずか14キロほど。これは通常の半分程度の量であり、一度に仕入れられる量も減少している状況だ。
能登半島地震の影響か、漁獲量が大幅減

4月に解禁された富山湾のシロエビ漁だが、新湊漁港での4月の漁獲量は平年の53%、5月は平年のわずか20%にまで落ち込んでいる。漁協はこれまでに2回の休漁を実施してきたが、2回目の休漁明け(5月21日以降)も不漁が続いたため、資源保護を目的に3回目の休漁を決定した。

昨年のシロエビ漁獲量は過去最少を記録。能登半島地震による海底地滑りで生息環境が悪化したことが原因と指摘されている。
値上げと新メニュー開発で苦境に立ち向かう

「大変厳しい。客には申し訳ないが値上げさせてもらっている。今までずっとシロエビを名物にやってきたので、影響は大きい」と道の駅の森悠芙子さんは打ち明ける。

道の駅ではシロエビの仕入れ値が地震前と比較して2倍に高騰。物価高の影響も相まって、名物のシロエビバーガーを今月から150円値上げしたほか、一部メニューの提供を取りやめざるを得なくなった。

地元の常連客からは「シロエビ・甘エビ・ホタルイカは3点セットで好き。たくさんは食べられないかもしれないね。あまり値段が上がると。自然が相手だからね...」と複雑な心境が語られる。
「いみずサクラマス」で新たな名物づくりへ
こうした状況を打開するため、道の駅では新たな挑戦を始めている。フードコーナーのメニュー表には、シロエビ料理と並んで「いみずサクラマスバーガー」「いみずサクラマスのピザ」といった以前にはなかったメニューが登場した。

実は道の駅では昨年、シロエビバーガーに次ぐ名物の必要性を感じ、射水市がブランド化を推進する「いみずサクラマス」を使った新バーガーを開発。今月からはピザやパスタなど新メニューを追加し、この苦境を乗り越える戦略を展開している。
「なかなか難しいけれど、シロエビが安定して穫れるようになってほしい。サクラマスも射水産の大事な食材なのでPRしていきながら、やっぱりシロエビもどんどん盛り上がりが戻ったらいいなと思う」と森さんは希望を語った。
地域の名産品が直面する課題と、それに立ち向かう地元の人々の努力。富山湾の宝石と呼ばれるシロエビの不漁は、漁業問題にとどまらず、地域の食文化や観光、そして人々の暮らしに深く結びついていた。