調理現場で出会った1丁の包丁が女性の人生を大きく動かした。研究を重ね現場の経験を活かし完成させたのは「洋」と「和」が調和した画期的な包丁だ。製品に込めた女性の思いに迫る。
包丁プロデューサーとの二刀流
静岡県南伊豆町で本格的なネパールカレーを楽しむことができる「ティハール」。

渡辺典子さんは10年ほど前からこの店の従業員として働いているが、もう1つ”包丁プロデューサー”としての顔を持つ。
もともと「包丁に全く興味はなかった」と話す渡辺さんだが「カレーの仕込みや千切りサラダの時に使う(店主の)包丁の切れ味に感動して、世の中に無い研ぎ方の包丁だったので、無いなら作ってしまおう」と思い立ったという。

渡辺さんが興味を抱いたのは、いわゆる片刃の包丁。
オリジナルの商品を作るため150丁以上もの包丁を研究し、刃先の角度や厚さ刃渡りなどについて試行錯誤を重ね、5年の歳月を費やし生まれたのがユニバーサルエッジ「PROCEED」だ。

その特徴を渡辺さんは「洋包丁の刀身に片刃の刃付けをしている。利き手側だけ研がれていて、裏はフラットな刃付け。更に刃先の厚さと角度のバランスによって薄切りの際に食材が包丁にくっつきにくいという刃離れ効果を生み出している」と説明する。
切れ味の違いを実演
この日、下田市にあるスーパーへ「PROCEED」の実演販売のためにやって来た渡辺さん。
以前、「PROCEED」をインスタグラムで紹介した際、動画は1億回以上再生されたが、一般にはまだまだ知られていないのが現実だ。

渡辺さんが実演をしていると、興味深げに見ていた女性が「あれなら能率が上がる。料理したくなる」と購入。
別の購入者も「くっ付いていた(食材が)ポンと飛んで行ったりするので、結構めんどうくさいが、切れてそのまま残ってくれるのはすごく助かる。ちょうど包丁を探していて、たまたまここを通りかかって、何だろうと興味を持ったら、凄くいい製品で、使ってみたいなと思った」と気に入った様子だった。

4月に「PROCEED」の使い心地を肌で感じてもらおうとネパールカレーの料理教室を開催したところ、参加者は玉ねぎやキュウリなどカットした食材のまとまりに驚き「凄く良いと思う、本当に。きれいに(食材が)離れていくのが良い」と感想を口にした。
渡辺さんも「(PROCEEDを)体験してもらい、切るのが楽しくなると料理が楽しくなるということが伝わったら嬉しい」と満足気な様子だ。
包丁との出会いに込める思い
渡辺さんが考案した「PROCEED」は2024年、県内で生み出されたデザインの優れたモノやコトを表彰するグッドデザインしずおかで「匠賞」を受賞。
南伊豆町のふるさと納税の返礼品にも選ばれ、主力商品となっている。

渡辺さんは「料理に興味がなかったのに、包丁の違いだけで野菜を切るのが楽しくなり、そこからレシピのレパートリーが増える楽しい経験をしたので、それを多くの人にも体験してほしい」と思いを語る。

1本の包丁との出会いで人生が大きく変わった渡辺さん。
その包丁を通して、料理の魅力や奥深さを多くの人に感じてほしい…それが今の願いだ。
(テレビ静岡)