「ハマスイ」の愛称で親しまれる高知市の桂浜水族館に約40年勤めた名物飼育員が、高知を離れ故郷の北海道へ旅立ちました。
桂浜水族館で過去に行われた毎年恒例の節分イベントで、“怖すぎる”赤鬼として活躍してきたのが名物飼育員の盛田勝寛さん(63)です。
アシカの母親代わりにミルクをあげていた盛田さん。名前を呼ばれたアシカが遠くから必死で駆け寄る場面もありました。
飼育員として、約40年。動物たちに深い愛情を注ぎ絆を結ぶその姿が、スタッフやお客さんから愛されてきました。
そんな盛田さんが故郷の北海道に戻ることになり、5月24日の高知空港に仲間が見送りにやってきました。
スタッフとカメラマンがこっそり、後ろから「おはようございます」と話しかけると、びっくりした盛田さんは「えー、なんだよ」と照れ笑いを見せました。
盛田勝寛さん:
「見送られるの苦手なんで、来ないでいいって言ったんですけど。寂しくて死にそうです」
現在63歳の盛田さん。名物飼育員として桂浜水族館を全国区の人気施設に押し上げた立役者ですが、糖尿病による腎不全で6年前から透析を続けています。そんな中、去年(2024年)10月、腎不全が原因で呼吸困難になり救急搬送される事態に。一人暮らしだった盛田さんは「死を身近に感じ心底怖くなった。飼い猫を餓死させられない」と、母や弟が暮らす北海道に帰ることを決意したのです。
盛田勝寛さん:
「(Q.皆さんに伝えたいことは)何にもない!みんな元気で、それだけ」
桂浜水族館スタッフ 森香央理さん:
「本当に、元気で長生きしてほしい」
盛田勝寛さん:
「森ちゃん、ありがとう」
若いスタッフにとってアドバイスをくれる頼もしい先輩であり、精神的な支柱でもあった盛田さん。秋澤館長にとっては一番の師匠でした。
桂浜水族館 秋澤志名館長:
「水族館の最初のいろはを教えてくれた方なので、こうやって別れるのはすごく寂しい」
搭乗者入口へ向かう盛田さん:
「じゃあ、みんなありがとう、みんな元気で」
ガラス越しの電話で、男性職員は盛田さんへ「会いに行きます」と、森さんは「帰ってきてくださいね」と伝え、最後にはスタッフみんなで手を振って見送ります。
盛田勝寛さん:
「40年もいたんで…ほんとに…言葉もないです。(Q.桂浜水族館はどんな存在)愛してますよ…それだけ」
桂浜水族館 秋澤志名館長:
「盛田さんのすごいところを側で見ることができたんで幸せでした。これからのハマスイを見てもらって、志名ちゃん、よう頑張ってるなって言ってもらえるようにしたいと思う」
盛田さんが大切にしてきた桂浜水族館。スタッフたちはその思いを胸に、これからもハマスイを盛り上げていきます。
盛田さんの帰郷を聞いた多くの人から「手紙を書きたい」との声をもらった桂浜水族館は、集まった手紙をまとめて届けることにしました。6月9日まで受け付けています。