実に半世紀ぶりの万博
大阪・関西万博で新居浜太鼓台が魅せた!
時をさかのぼること55年。愛媛から旅立った新居浜太鼓台は、1970年の大阪万博に参加していた。実に半世紀ぶりの万博。
新居浜市内54台の太鼓台から派遣が決まったのは、川西地区の口屋太鼓台と中萩地区の岸之下太鼓台、萩生東太鼓台の3台。
一体どんなパフォーマンスになるのか?

3台そろっての合同練習
万博での演技を前に、この日は3台そろっての合同練習。
岸之下太鼓台青年部・守谷貴裕部長:
「太鼓台3台で合わせるところの練習をしたいと思ってるので、よろしくお願いします。」
新居浜太鼓祭りの特徴のひとつといえば、約3トンとも言われる太鼓台を120人以上ものかき手が、息を合わせて披露する勇壮なさしあげだ。

息の合わせ方の練習
まずは一斉差し上げでの息の合わせ方の練習から。
地区や太鼓台で違うタイミングを合わせる。
口屋太鼓台の指揮者は「初めての試みなので楽しみですけど…」と語る。
メンバーは今回の万博である『見せ場』を考えていました。

一斉にさしあげる「寄せ太鼓」
挑戦するのは太鼓台同士をピッタリと寄せ合い、一斉にさしあげる「寄せ太鼓」。
萩生東太鼓台青年団・松浦伸光団長:
「太鼓台同士が寄せるんで、かき棒同士がぶつかるんで、手が挟まれたり事故につながるんで。」
差し上げの技の中でも特に難しいのが「寄せ太鼓」だ。

かき手が笛と太鼓に合わせてさしあげる練習を繰り返す
「寄せ太鼓」は中萩地区では秋祭りで毎年披露し、2台は得意としている技。しかし川西地区の口屋太鼓台にとっては初めての挑戦になる。
練習では寄せ合うかき棒を担ぐかき手が、笛と太鼓に合わせてさしあげる練習を繰り返して、本番のイメージを高める。
寄せ太鼓初挑戦の口屋太鼓台は、メンバーで動画を共有し、自主練習を重ねた。
岸之下太鼓台・守谷さん:
「もうばっちりいけると思います。」
口屋太鼓台・高橋さん:
「いけるように、めっちゃ教えてもらったので、絶対失敗しないようにやります。」

いよいよこの日がやってきた
5月21日午前0時30分、大阪万博敷地内倉庫前にトレーラーが到着した。
太鼓台は新居浜からトレーラーで会場近くまで運ばれ、ここからは人力で万博会場に運ぶ。見えてきたのは万博の象徴大屋根リング。
かき手の1人はこう話す。
「すごいですね。世界旅行をしてる気分です。太鼓台で。
(Q.1時間くらい歩きますが?)これも楽しみながら行きたいと思います。」

すぐに太鼓台の飾りを取り付け
午前2時、会場となるEXPOアリーナに到着すると、すぐに太鼓台の飾りを取り付けにかかる。
金糸銀糸の龍が映える布団締めを太鼓台にクレーンで乗せ、くくりや房、絢爛豪華な幕を取り付けていく。

早朝のアリーナに3台の太鼓台の準備が整った!
そして!早朝のアリーナに3台の太鼓台の準備が整った。
かき手たちは世界の大舞台に意気込みます。
「世界に発信できるように一生懸命がんばります。」
「やっぱり新居浜のぼくら寄せ太鼓してるので、やっぱり寄せを見てもらって、こういうことやってるんだと、アピールしていきたいです。」

世界に発信できるように一生懸命がんばります
午前8時半、太鼓台を担ぐ男たちが到着。
新居浜からはもちろん、愛媛県外に住む新居浜ゆかりの人がこの晴れ舞台に駆けつけた。
新居浜出身で京都在住:
「きょう京都から来ました。もう新居浜の祭りを広めれるチャンスだと思って。」
新居浜出身で大阪在住:
「きょうは大阪から来ました。参加せざる得ないという気持ちで来ました。血が騒いでます。」

舞台は整った!
集まったかき手は総勢850人。全国や世界からやってきた万博来場者が見守る中、舞台は整った。
鈴木瑠梨キャスター:
「3台の太鼓台がかきくらべを披露しています。今さしあげられました!ほうりなげ、さしあげた後、そのまま空中に放り上げる「ほうりなげ」も豪快にキマりました!」

観客もかき手に挑戦する体験イベントも
演技の合間には観客もかき手に挑戦する体験イベントも。
ニュージーランドから来た2人:
「とても重かった何をすればわからなかったけど楽しかった。すごい力とパワフルな声を出しました。」
イギリスから男性:
「イギリスから来ました。(太鼓台担いで)肩がつらいよ。イギリスでは見たことがない新しい体験だったよ。」

3台そろっての寄せ太鼓の披露
そしてイベントのフィナーレは万博出場のためにこだわった大技、3台そろっての寄せ太鼓の披露だ。
口屋太鼓台・高橋勇人正指揮者:
「地区の垣根を超えた新居浜の心意気を見せたいと思います!頑張ります!」
始まった最後の演技。太鼓台同士がゆっくりと近づきあい、次第に声と笛太鼓のリズムが合っていく。そして…
アナウンス:
「せーの!サイテーサイテクレソリャ!決まったーソーリャソーリャ!!」
3台の息が見事にあった寄せ太鼓!力強く金糸銀糸が万博の空に高く舞う姿に、詰めかけた観客から割れんばかりの拍手が贈られた。

何回もさしあげしててすごいカッコよかった
見物客:
「愛知と静岡から。すごい迫力あって感動しましたね。」
見物客:
「大阪に住んでるんですけど地元が新居浜なので見に来ました。寄せ太鼓って間が危ないから心配だったんですけど、何回もさしあげしてて、すごいカッコよかったです。」
岸之下太鼓台青年部・守谷貴裕部長:
「この世界の舞台でしっかりと、新居浜太鼓台の演技が見せれたと思ってます。」
萩生東太鼓台青年団・松浦伸光団長:
「また何十年後とかこんなに大きなイベントに次いけるかも知れないし、僕たちが下の世代に教えていくことで、それが成し遂げていかれるんじゃないかと思います。」
口屋太鼓台・高橋勇人正指揮者:
「今後継者不足が言われてますが、今回の万博派遣を契機に(太鼓台に)関わってくれる人が増えたらと思います。最高の万博でした!」
この日、世界に届けと万博の空に響いた太鼓と男たちの声は、伝統の祭りを守り続ける決意のようにも聞こえた。
