松江市と出雲市を結ぶローカル鉄道・一畑電車が5月1日、新しい回数券を発売した。
その名も「雨の日回数券」。対象は中学生以上の生徒・学生で、雨や雪の降る日限定で利用できる。
全国の鉄道で初めてというユニークな回数券、その狙いを探った。
雨の日の通学を応援したい…全国初「雨の日」限定回数券

「おそらく全国でも初めてではないかと思います」と一畑電車の宅野康平さんがPRするのは、2025年5月1日に発売された「雨の日回数券」。

対象は、中学生から大学生までの生徒・学生。その名の通り、雨の日や雪の日など、悪天候の日限定で利用できる回数券だ。
このユニークな回数券、誕生のきっかけは、職員が車窓越しに目にした雨の日の光景だった。

雨の中、かっぱを着て、ずぶ濡れになりながら、懸命に自転車のペダルを踏む中学生や高校生の姿に「こんな日だけでも電車を使ってほしい」と思い、この回数券の発売を決めたそうだ。
ローカル鉄道 沿線人口減少で厳しい経営環境

松江市と出雲市、出雲大社を結ぶ約42キロを走るローカル鉄道・一畑電車。マイカーの普及に沿線人口の減少が追い打ちをかけ、利用減少に歯止めがかからない状況が続いている。

新型コロナの影響も大きく、コロナ禍前、年間約150万人だった利用者は、3分の1近く減少した。
収束後は観光利用を中心に回復しつつあるが、少子化の影響で、今後、収入の柱でもある通学定期利用者の減少が見込まれ、経営環境は一層厳しさを増しそうだ。
回数券をきっかけに「雨の日は電車に乗って」

一畑電車の宅野康平さんは「雨の日だけでもご利用いただくお客様が増えて、最終的にはお客様全体の増加につながれば良い」と話し、この「雨の日回数券」が、中高生が電車に乗るきっかけになればと期待している。
生徒・学生のために「制約」ゆるめに
中高生が電車に乗るきっかけに、という思いも込められた「雨の日回数券」。通常の回数券に比べて、お得な設定となっている。

回数券といえば、10回分の料金で11枚セットの、1回分の運賃が割引になるのが一般的だが、「雨の日回数券」は、10回分の料金で15枚セット。通常よりも割安だ。
また、回数券には有効期限があり、3か月間や1年間が一般的だが、「雨の日回数券」の有効期限は「学籍有無に準ずる」、つまり卒業するまで利用することができる。
「雨の日回数券」高校生は歓迎

生徒・学生を応援したいという気持ちも込められた「雨の日回数券」、高校生からは、「雨の日は保護者の車で送ってもらっている。(雨の日回数券は)良いと思います。利用を考えます」、「自転車だと雨の日は大変なので、電車が使えるとすごく助かる」など歓迎の声が聞かれた。
その思いは届いているようだ。
ゆるすぎ?「雨の日」は利用者が判断

ところで、どの程度雨や雪が降れば回数券が使えるのか、気になるところだが、一畑電車は「雨の日」「雪の日」に当たるかどうかは利用者の判断に任せるとしている。
生徒・学生限定とは言え、制約はかなりゆるめの「雨の日回数券」。
これからの梅雨、そして雪の季節に、一畑沿線からかっぱ姿でペダルを踏む中高生の姿が消える、かもしれない。
(TSKさんいん中央テレビ)