5月21日夕方、長野県須坂市で、走行中の長野電鉄の車両に強風で飛ばされた農業用のパイプ製の小屋が衝突し、乗客3人が死傷した事故で、22日、国の運輸安全員会の調査官が現地調査に入った。また、気象台も現地調査を行い、21日午後5時40分から50分にかけて、現場周辺で発生した突風の種類はダウンバーストまたはガストフロントの可能性が高いと判断したと発表した。
農業用パイプ製の小屋が衝突
5月22日昼前、須坂駅近くにある長野電鉄の事務所に入った国の運輸安全委員会の鉄道事故調査官。事故を受けた現地調査だ。
事故があったのは、長野電鉄の信州中野発長野行きの3両編成の普通列車。

21日午後6時前、須坂市の日野駅の手前を走行中、強風で飛ばされたとみられる農業用のパイプ製の小屋が先頭の車両に衝突した。
この事故で長野市の会社員の男性(56)が死亡し、男性2人が頭に軽いけがをした。
3人は、先頭車両で割れた窓ガラスの近くにいたという。

亡くなった男性は、通勤のため毎日、長野電鉄を利用していたという。
「まさか、真面目な人だった」と男性の知人は突然の死を悼んだ。
小屋は1カ月以内に作られたか
近所の住民によると、線路脇には1カ月以内にパイプとトタンなどで作られた小屋が作られたという。
警察も、その小屋が風に飛ばされ、列車と衝突したとみて調べている。

近所の住民は「トラクターが雨で濡れるからやった(建てた)んだね。屋根は両端がトタンで青いシートで巻いてあった。あれはだめだ、飛んじゃう。(21日は)空が変わってきて、何かと思ったら雨と風がすごかった」と話す。
当時、「竜巻注意情報」
風にあおられながら打ち付ける激しい雨。事故が起きたのと同じ時間帯の須坂市内の様子。
当時、須坂市を含む県北部には「竜巻注意情報」が出されていた。

長野電鉄によると、一時、全線で運転を見合わせ、事故に遭った列車も須坂駅を4分遅れで発車したという。
突風の種類は「ダウンバースト」か
22日は、気象庁の機動調査班が現場を訪れ、当時の状況を調査した。
気象庁機動調査班の渡辺記秀さんは「当時は大気の状態が不安定で雷もなり、竜巻注意情報も発表になっていて、竜巻や激しい強風が起こりやすい状況だった。今のところ(ほかの)被害の状況は見られないが、これから近くに住む方に当時の状況を聞き取り調査して、そういったところからできる限り推測したい」と説明した。

その後、気象台は「21日午後5時40分から50分にかけて、現場周辺で発生した突風の種類はダウンバーストまたはガストフロントの可能性が高いと判断した」と発表した。その強さは風速約30m/sと推定されるとしている。
その根拠について、次のように説明している。
・突風発生時に活発な積乱雲が付近を通過中であった。
・渦の目撃など、竜巻を示唆する情報が得られない。
・突風は比較的短時間(1~10 分)および比較的長時間(10 分程度)であったという証言がそれぞれ複数得られた。
・突風は強雨またはひょうを伴っていた。

ダウンバーストとは、積乱雲から強い風が吹き下ろす現象。ガストフロントは積乱雲からの下降気流の先端と周囲の暖気の間で形成される前線のことだ。
国の運輸安全委員会も現地調査
また、国の運輸安全委員会の調査官も現地調査に入り、長野電鉄への聞き取りや現場周辺の調査を進めている。

鉄道事故調査官の小沢隆之さんは「事実情報を一つずつ丁寧に集めて、真実が何か、発生原因が何か、突き止められるように調査したい」と述べた。
(長野放送)