昭和に建設された行政の“箱物”は老朽化が進み、その維持費は財政を圧迫している。人口減少が進む中、新潟市は将来に最適な公共施設の在り方を模索しながら、その再編に本腰を入れようと動き始めた。

施設廃止のマイナスイメージが壁に…

公共施設の今後について検討する新潟市財産経営推進本部会議。開催されたのは、なんと2014年の初回以来、11年ぶりだという。

新潟市財政経営推進本部会議
新潟市財政経営推進本部会議
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会議は本部長である中原八一市長の反省の弁で始まった。

「私も反省すべきところはたくさんある。これまでは施設を再編するという言葉のマイナスイメージ、つまりは『施設がなくなってしまうのではないか』という市民の不安を払拭するのが難しく、地域での議論が思うように進まなかった」と、これまでの経緯を語った。

さらに、新型コロナや能登半島地震の対応が優先されてきたため、公共施設についての検討は後回しになってきたという。

今後は、再編の議論を加速させていく方針だ。

昭和50年代に建設された公共施設は老朽化

新潟市の公共施設は、学校・コミュニティ施設・公民館など、その多くが昭和50年代に建築。それらの老朽化は進み、維持費は市財政の大きな負担となっている。

年代別公共施設の建築件数(新潟市)
年代別公共施設の建築件数(新潟市)

また、公営住宅を除く新潟市の公共施設の総面積は270万㎡と、市民1人あたりの面積は政令市で最大となっていて、人口減少が進む中、人口に見合った公共施設の再編は待ったなしだ。

915施設が見直し対象に

今回、見直しの対象となるのは公民館やコミュニティセンターなど、24種類・915の施設だ。

再編検討の対象となった『大江山農村環境改善センタ-』
再編検討の対象となった『大江山農村環境改善センタ-

その内の一つが、昭和55年(1980年)に建築された江南区の『大江山農村環境改善センター』。調理室や体育館などを備え、地域住民が集える施設として活用されてきた。

しかし、建築から45年が経ち、老朽化が進んでいる。

このほか、昭和54年(1979年)に建築された東区の石山地区公民館なども再編の検討対象だ。

“廃止”ではなく最適な形での“再編”

今回、公共施設の再編に本腰を入れる中で、新潟市が強調していることがある。

新潟市 中原八一 市長
新潟市 中原八一 市長

それは、施設を単に廃止するのではなく、今あるものを集約したり、機能を移転したりするなどして、最適な形に再編するという点だ。

中原市長は、「単純に施設を廃止してしまうと、市民の皆さんから思われてしまわないように」と念を押す。

機能集約・統合・多世代交流…新しい公共施設の形とは?

新潟市が目指す再編の一例が、2023年に江南区に開設された『曽野木コミュニティセンター』だ。

曽野木コミュニティセンター
曽野木コミュニティセンター

老朽化した2つの市立保育園を民間経営の保育園に統合し、新たなコミュニティ施設内と同じ敷地に建築した。

コミュニティセンターでは、多目的ホールや研修室などのほか、カウンターが設置された交流スペースもあり、交流スペースでは、小学生が放課後に宿題をする姿もあるという。

この日、研修室では折り紙教室が開かれていた。

「おりづるの会」のメンバーは、「歩いて来られるので集まりやすい。みんなでおしゃべりしながら気楽にできる」と話す。週一回の活動は生活の張り合いになっているようだ。

宿題をしていた小学生が折り紙教室に飛び入り参加することもあるといい、多世代交流を叶えていた。

新潟市は今後、商業施設などで市民の声を拾い、年度内に公共施設の種類ごとの配置方針を示すとしている。

これからの市民ニーズにあった公共施設、そして、次世代に負担を残さない公共施設の在り方を目指し、新潟市は全庁を挙げてこの問題に取り組む構えだ。

(NST新潟総合テレビ)

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