プロ野球パ・リーグのクライマックスシリーズ突破を決めた福岡ソフトバンクホークス。この日の夜に行われた祝勝会では、いつもと違った光景が見られた。

恒例の“ビールかけ”は取り止め

2025年10月20日の夜、選手たちが手に持っているのはビールではなくシャンパンだ。アサヒグループホールディングスへのサイバー攻撃によるシステム障害の影響で、ビールの供給が滞っていることから恒例の“ビールかけ”は取り止めとなり“シャンパンファイト”に切り替えて、喜びを分かち合った。

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アサヒグループが、ハッカー集団によるサイバー攻撃を受け、システム障害が発生して約1カ月。一時、生産停止に追い込まれた各地の工場は稼働を再開させているが、現在もシステムは、復旧できていない。

そのため手作業による受注や出荷業務を余儀なくされ、売れ筋のビール商品など一部で品薄の状態が続いている。

これから本格化するデパートのお歳暮商戦。そしてビール需要が増える忘年会。年末の書き入れ時を前に影響の長期化を懸念する声も上がっている。

「アサヒ以外のメーカーの商品も品薄に」

福岡市博多区の『竹乃屋 博多バスターミナル店』。店舗では、午後6時までの“ハッピーアワー”の時間帯だとアサヒの生ビールが1杯429円。

6時以降の価格よりも220円安く飲めるとあって、早い時間帯から生ビールの注文が入る。「毎晩飲むから、ちょっと安い方が嬉しい」と来店客も美味しそうにジョッキを傾ける。

店によると、アサヒのシステム障害の影響について、ビール不足は解消しつつあるとする一方で、ハイボールやチューハイなどの提供に使用する炭酸のガスボンベの入荷が困難な状況だということだ。

さらに女性客にも人気のカルピスサワー。通常は、容量の多い紙パックのカルピスを使っているが、現在、入荷ができておらず、小さいペットボトルで代用しているという。

店長のデラクルズ・レジイさんは「アサヒ以外のメーカー、商品も品薄となりつつある。最悪、客に提供できなくなるものが出てくることを懸念している」と心配顔だ。

広がる経済的損失への懸念

福岡市西区の酒店『溝口酒店』。今もアサヒビールの入荷制限が続いていて、取り引き先の飲食店などには、一時的に代わりの商品を勧めているという。

店長の木付雅之さんは「10頼んで8割から9割しか入ってこない。アサヒを扱っている顧客に関しては、他のビールメーカーへの代替をお願いして、了承してもらっている」と話す。

アサヒビールは、今季のお歳暮ギフトをスーパードライ関連の3商品に限って販売すると発表。キリン、サッポロ、サントリーのビール大手3社も安定供給を優先させるため、ギフト商品を絞って販売するとしている。

店長の木付さんは「年末商戦、これからギフトシーズンになってくるが、先が見通せなくて心配」と表情を曇らせる

西日本新聞のメディア戦略局長の池田郷さんは「企業にとってサイバー攻撃は死活的な問題で、今回、攻撃を受けたアサヒだけではなく、ほかのメーカーにも被害が及ぶので影響は大きい。隣の韓国では、政府が『ハッキングとの戦争』と対策の必要性を呼び掛けている。日本でも官民を挙げた対策が急がれる」と懸念を表す。

アサヒグループを狙ったサイバー攻撃。システムの完全復旧はいつになるのか?影響の長期化とともに経済的損失への懸念も広がっている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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