2年前、福岡・柳川市の専門学校で、学校行事のバーベキュー中に、コンロの火が学生に燃え移り、学生4人が死傷した事故の初公判が福岡地裁で行われた。男子学生1人に対する業務上過失致死の罪で在宅起訴された当時、職員の男が、起訴内容を認めた。

コンロに消毒用アルコール 炎上

楽しそうにバーベキューを楽しむ若者たち。生徒や教師の親睦を深めるため柳川市の「ハリウッドワールド美容専門学校」で毎年開催されていた催しだ。学生生活の思い出になるはずの初夏のバーベキュー大会だったが、一瞬にして阿鼻叫喚の記憶へと変わってしまった。

「ハリウッドワールド美容専門学校」過去のBBQの様子
「ハリウッドワールド美容専門学校」過去のBBQの様子
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事故は、2023年5月24日に起きた。約480人の学生がバーベキュー大会に参加していた最中、コンロが突如、炎上したのだ。

近くにいた学生4人に火が燃え移り、当時18歳の男子学生が死亡。18歳から20歳の3人が火傷を負った。

事故のきっかけは、消毒用のアルコール。起訴状などによると、当時、教員助手だった25歳の男性職員が、炭火の勢いを強めるため、アルコールであるエタノールやメタノールを主成分とする洗浄用アルコールを水で希釈したものをコンロに注ぎ入いれたことにより、木炭の火がアルコールに引火。燃え上がった火は、当時18歳の男子学生の体と衣服に燃え移り、重い火傷を負わせた。男子学生は、翌月、死亡した。

トップへの“忖度”でアルコール投入

一体、なぜ、教師の男は、燃え盛るコンロに危険なアルコールを入れたのか?見えてきたのは、トップへの“忖度”だった。

学校側が行った保護者説明会では、保護者から「担当の先生がアルコールを注入して事故に繋がったとなっているが、『着火後の追加は危ない』と通常であれば認識しているはず。そういうことについて、事前に職員への注意喚起はなかったのか?」と学校側の危機管理について質問が寄せられると、当時の古賀理事長は、「それはしておりません。それはなぜかというと、危険な作業はすべて、大体、私が1人でしてきて、生徒の安全を確認した上で行事を行っていたので」と回答した。その上で、「火起こしにあたり、熱中症や食中毒にならないよう、早く焼けるように消毒用アルコールを使用しました」と言及し、そもそも理事長自身が、アルコールで火起こしをしていたことを明らかにした。

前理事長と職員は不起訴に

2024年7月に弁護士らでつくる第3者委員会が公表した調査報告書でも、当時、理事長だった古賀氏が、「火起こし」として、アルコールの利用を発案、実行したと認定。

元教員助手の男は、理事長から直接の指示はなかったものの、『理事長の“意に沿うもの”』と考え、とっさの判断で火を投げ入れたと指摘した。加えて、「強権的な経営による危機管理意識の欠如などが、事故を引き起こした」とされた古賀氏は、理事長を辞任した。

警察は、2024年1月、業務上過失致死傷の疑いで、古賀前理事長と職員2人の計3人を書類送検。しかし、検察は、このうち25歳の男性職員のみを業務上過失致死の罪で在宅起訴とし、前理事長と職員1人については、「諸般の事情を総合的に考慮した」として不起訴とした。

初公判で起訴内容認める

2025年5月20日午後、福岡地裁で開かれた初公判。神妙な面持ちで廷内に入ってきた元教員助手の男。

冒頭、起訴内容について裁判長から罪状認否について聞かれると、「間違いありません」と起訴内容を認めた。弁護側は、起訴内容を認めた上で、情状酌量を求めた。

一方、検察側は冒頭陳述で、「理事長は、生徒の周りでアルコールをコンロに注ぐことは推奨していなかった」と主張。元教員助手の自己判断による過失だったと指摘した。

次回公判は、7月4日に開かれ、被告人質問が行われる予定だ。

(テレビ西日本)

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