川崎市の20歳の女性が行方不明になっている事件。岡﨑彩咲陽(あさひ)さん(20)の家族によると、少なくとも3つ、警察と接触するタイミングがあったという。警察の対応に問題はなかったのか、元警察庁幹部で、兵庫県警の刑事部長などを歴任した棚瀬誠さんと見ていく。
去年6月暴力受け被害届提出も取り下げ
棚瀬さんは警察の対応をどうみているのか。

元兵庫県警刑事部長・棚瀬誠氏:
結果的にご遺体が見つかり、女性が引き続き行方不明。この結果は真摯に受け止めるべきだし、反省すべき点があればしっかり反省する必要がある。
まず1つ目のタイミングは、岡﨑さんが男性と交際を始めて1カ月後の2024年5月ごろに関係が悪化し、男性のストーカー行為が始まった。6月には、岡崎さんは男性に連れ去られ暴力を受けるなどして警察に被害届を提出。ただその後、被害届は取り下げたという。

その後、12月に川崎市の祖母宅で同居したが、再び男性のストーカー行為が始まり、12月20日、行方がわからなくなったという。
その行方不明になった直前、2つ目のタイミングがあった。
「家の周りに男がいそうです」12月警察に9回の電話
岡﨑さんは12月9日から行方不明になった当日の20日にかけ、警察に9回の電話をかけていた。

捜査関係者によると「家の周りに男がいそうです」などと相談をしていたことが新たに分かった。
不明になった2日後に祖母宅の窓ガラス割られているのを発見
さらに3つ目のタイミングが、岡﨑さんが行方不明になった2日後。
岡﨑さんが行方不明になる前に生活していた祖母宅の、1階の窓ガラスが割られているのに祖母が気づき、警察に通報した。

警察が現場を調べたが、「外側から割ったかは分からない」「事件性についてもない」と言われたと家族は主張している。
12月下旬、家族は警察に行方不明届を出した。
ここまでが、家族が主張する岡﨑さんが行方不明になった一連の経緯だ。

警察は6月の被害届でトラブルを把握した可能性がある。ただ取り下げとなると、その後の捜査はどうなるのか。
元兵庫県警刑事部長・棚瀬誠氏:
暴力の被害届提出の前に、ストーカー被害の申告がなされていたのかは明らかではないが、暴力の被害届自体が取り下げられるとなれば、この暴力事件の捜査を継続する必要性は相対的に低くなる。他方、一連のストーカー事案を裏付ける証拠にもなり得るので、そこは着目するべきだと思います。
家族によると、岡﨑さんは行方不明になる直前まで祖母に「殺される」「怖い」などと言っていたという。

警察への電話では「家の周りに男がいそうです」といった相談をしていたと言うことだが…。
元兵庫県警刑事部長・棚瀬誠氏:
同じ方が警察に連日何度も電話をされてくるのはよくあること。一般的に、ストーカー被害を警察に申告するかを悩みながら、どういう対応が理想的なのか被害女性も逡巡しているので、本件でも、気持ちが揺れ動く中で何度も連絡をしたことが考えられます。
ポイントは110番ではないので、切迫したものではなく、まさに心情を吐露するような電話が連日なされていたのはあり得る。
ストーカー被害の話されていたなら「事件性なし」判断は拙速
行方不明になった2日後、祖母がガラスが割られていることを発見。ただ、現場にかけつけた警察官が事件性なしと判断したという。

元兵庫県警刑事部長・棚瀬誠氏:
一般的にガラスが割られていて、しかもサムターンの周りとなると、泥棒、侵入窃盗なんじゃないかという感じを受け止めます。通報があった際に、「孫娘がストーカーの被害に遭っている」という内容で申告されているのか、「窓ガラスが割られている」という話かは全く別物で、どういう状況が警察官に伝えられていたのかが重要だと思います。
SPキャスター・中村竜太郎さん:
ストーカーの犯罪は増えている。ストーカー規制法というのがあるわけだが、個人的な意見だが、より一歩踏み込んだ捜査ができたんじゃないか。事件を未然に防ぐためにはもっとストーカー対策、より踏み込んだ仕組みを作っていくべきなんじゃないかと思う。
アメリカなんかでは専門の捜査官が即時に対応してケアしていくという事例があるので、それも日本もできないことはないと思う。
警察は、岡﨑さんの元交際相手の男性が何らかの事情を知っている可能性があるとみて調べている。
男性海外に…今後の捜査は
男性は現在、海外にいるとみられているが、どう捜査していくのか。

元兵庫県警刑事部長・棚瀬誠氏:
海外にいるとすれば、帰国を待って、本件であれば死体遺棄で逮捕状を取り、空港で待ち受けて逮捕することも考えられます。ですが、帰国するのがいつなのかということもあり、必要となれば海外当局と連携して帰国を促す。あるいは国外退去してもらう手続きも考えられると思います。
警察によると遺体は若い女性と推定。死因は不詳で死後1カ月以上と推定されるという。

今後はどんな捜査をしていくのか。
元兵庫県警刑事部長・棚瀬誠氏:
死因が不詳ということであれば、ご遺体の状況だけからは、これが殺人事件なのかどうかは判然としない。今後の捜査は、死体遺棄について捜査を進め、遺棄に至った経緯を調べる過程で殺人なのか、病死なのか動機も含めて捜査を進めることになると思います。
(「イット!」 5月2日放送より)