クールビズの導入から20年が経過した。社会に定着し、約半数が期間外でも軽装勤務を実施している一方で、職場の服装規定が変わっていないケースもあり、制度の浸透にはばらつきがある。専門家は、すぐに効果が見えることと「やめる言い訳」を与えたことが、普及の要因だと分析する。

20年で定着「クールビズ」制度…職場対応に差も

「クールビズ」の導入から20年が経った。環境省では5月1日から、クールビズでの勤務がスタートし、アロハシャツやポロシャツなど、軽装で仕事をする職員たちが見られた。

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職員:
夏が始まったなという感じがします。

2005年から始まったクールビズは、2025年で20年の節目を迎える。

開始当初の2005年6月~9月だった期間は、2011年に5月〜10月に変更され、2021年以降は指定がなくなった。猛暑や夏の長期化に合わせて、クールビズの期間も変化してきた。

ファーストリテイリンググループのプラステが行った夏場のオフィスファッションに関する意識調査によると、2021年以降6月〜9月の期間を超えて、クールビズで勤務をしていると答えた人は、47.6%と全体の約半数で、期間内だけという人が17.4%、していない答えた人が33.6%となった。

さらに業界別に見ると、「金融・銀行・保険」業と、「IT・ソフトウェア・情報処理」業が、他業種に比べて長期間クールビズスタイルを着用している結果となった。

またクールビズの認知について聞くと、83.0%の人が「社会的に認知されている」と答えた一方、実際に勤務先の服装規定が変化したかについては17.6%の人が「変化していない」「どちらかというと変化していない」と回答。「変化した」「どちらかというと変化した」と答えた人は80.1%だった。

認知度の高さに対して、職場では対応が追いついていないところもあるようだ。

環境省の調査では、クールビズの2025年の職場での導入率は45%だという。

環境省は、「健康を第一にエアコンの温度を柔軟に設定し、快適で働きやすい軽装を実践してほしい」などと呼び掛けている。

公務員の実践と目に見える効果が広がりの起点に

「Live News α」では、働き方に関する研究・調査を行っている、オルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
クールビズ、すっかり定着しましたよね。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
国がビジネスや暮らしのスタイルを変えるよう呼び掛けても、定着しないものが多いですが、クールビズは、その中でも成功したケースだと思います。

クールビズから成功の法則みたいなものを出して、今後に活かしていくという意味でも、このタイミングで振り返っていくのは重要ではないかと思います。

堤キャスター:
なぜ、ここまで広がったのでしょうか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
1つは、クールビズという名前が、シンプルで分かりやすく、誰もが言いやすかったことです。ただ、これは表面的なもので、本質的な理由が2つあると思います。

1つは、変化が分かりやすく、すぐに効果が見えたことです。まず、役所の公務員が率先して実践し、そうなると大手企業などでも、一斉に続いたため、すぐに変化を実感できたという状態がありました。

こういった政策は、発表後が一番注目が高くなるわけですが、その時に効果を実感できると、その後も定着しやすいです。

逆に、効果が実感できないと、形骸化してしまうことがありますが、そうならなかったのは大きいと思います。

やめたかった習慣に国のお墨付きが変化を促す

堤キャスター:
もう1つの理由については、いかがですか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
潜在的にみんなが不要だと思っていたことが、国のお墨付きによって、やめる言い訳が出来たことが大きいと思います。

「いらない」、「無駄」だと、みんなが思っていても、マナーや社会的な目を気にして、やめることができないというケースは多いです。それが、クールビズという政策と名前ができたことで、やめる言い訳ができたわけです。

お墨付きをもらって、みんなが不要と思っていたことが実行できるというのは、いかにも日本的ではあります。

堤キャスター:
クールビズの成功から、学ぶことは多いかもしれませんね。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
今後、何か政策の実効性を考える時には、すぐに効果が見えること。そして、本当はみんなが不要と思っているけど、なかなかマナーや社会の目を気にして、できないことを対象にすることが重要になります。

逆に言えば、人の行動を変えたいと思うときは、この2つが叶うように設計することが求められるということでもあります。

政府としても政策を出すだけではなく、それをどうすれば、社会に定着するのか、人の行動を変えるのかまで設計する必要があると思います。  

堤キャスター:
クールビズは服装がカジュアルであっても、いい仕事をすれば良いという、とてもシンプルな考えが根底にあるのではないでしょうか。周りを不快な思いをさせないことはもちろん大切ですが、本来の意味を考えて、自分に合ったものを選択できると良いですよね。
(「Live News α」5月1日放送分より)