宮城県石巻市で半世紀以上営業を続けるラーメン店が12月30日、閉店します。
両親から店を受け継いだ男性は、売り上げの低迷などに悩まされながら、家族への思いとともにのれんを守ってきました。
石巻市大街道東。国道沿いで目立つ、年季の入った建物と赤いのれん。
「金華山ラーメン」です。
創業1973年。52年間、この場所で営業を続けています。
午前9時半、店主の阿部繁雄さんがやってきました。
一人で店を切り盛りしています。
金華山ラーメン 阿部繁雄さん
「時間に追われ、追われ、追われ…」
午前11時半。きょうも営業が始まりました。
客
「最初に来たのはもう10年以上前。(閉店は)寂しいです。どこの担々麺を食べればいいのかなという感じです」
「高校の時から通っているので、安定の味で。閉店されるということですごく寂しい」
看板メニューは「ネギ味噌チャーシュー」。
自家製みそに、手打ち麺。チャーシューも阿部さんが作っています。
創業当時から使っている店の製麺機です。
金華山ラーメン 阿部繁雄さん
「現役で動いてるんですよ、彼は。彼女なのか、分からないけど(笑)。まあでもこれも処分するので。大変ですよ、いろいろと」
もともと、両親が経営していた店を、19年前に阿部さんが継ぎました。
父・順吉さんです。認知症を発症しましたが、今でも1時間程度店に立ち、注文を聞くなど、できる手伝いをしています。
阿部順吉さん
「お客さんと常に会っているからそれが楽しみだよ。やめるのがちょっと寂しいけどな」
母・容子さんは、2013年、72歳で亡くなりました。
中心になって店を営業していた容子さん。忙しく働く姿を見ていたことが、阿部さんが店を継いだ理由です。
金華山ラーメン 阿部繁雄さん
「助けたいというのがほとんどですね。お母さん大好き人間なので。楽しかったですよ。おふくろにもこんな仕事できると思わなかったって言われたから」
家族の思いが詰まった店。今年で、畳むことにしました。
最大の理由は、売り上げの低迷です。
コロナ禍を境に客足が減り、回復しませんでした。
金華山ラーメン 阿部繁雄さん
「やめると考えたのは4、5年前あたりから。ずっと思っていたので、要はコロナ中」
Q4・5年は続けたのは?
「意地だったんでしょうね、おそらく。悔しいというのがほとんどじゃないですか。なんでこんなのでやめなきゃないんだというのもあったし」
閉店を決めてからは、気持ちが楽になったといいます。
金華山ラーメン 阿部繁雄さん
「ずっと苦しんでたの。ようやく、ようやくこう自由になれるんだなって、しがらみから。苦労しかしていなかったことからようやく解放されたので」
営業が終わった後の、ささやかな楽しみ。自宅での晩酌。
知り合いに作ってもらった、「金華山ラーメン」のコップで酒を飲みます。
金華山ラーメン 阿部繁雄さん
「ここから第二の人生とも自分で思っているので、もうやりたいようにやっていきたい。常連さんは本当にありがたいね。感謝しかない」
店への愛着と苦しい経営事情の間で、閉店を決断した阿部さん。地域に根差した店は、12月30日、歴史に幕を下ろします。