夏の猛暑にゲリラ雷雨、さらに冬の厳しい寒波と異常気象が“異常”でなくなりつつある昨今。農作物への打撃が深刻化する中、静岡県河津町と東伊豆町では特産品に影響が及んでいて生産者が頭を悩ませている。
昨夏の猛暑で開花に大きな遅れ
色とりどりの花が並ぶ「かわづカーネーション見本園」。

品種の研究成果など町の特産をPRする場として毎年2月1日から開かれている。
しかし、2025年は開始から2カ月以上経っているにも関わらずつぼみが目立ち、栽培管理者の飯田進さんは「昨夏の異常な暑さで植えた苗が萎縮してしまった。だから成長が本当に遅れ、いつもだと12月~1月に開花する花がまだ全然。こんなことは初めて」と嘆く。

ハウスでは274種・1万2500株ものカーネーションが栽培されているが、2024年の同じ時期と比べると違いは一目瞭然となっている。
原油高や物価高も追い打ちをかけ
こうした中、最盛期を迎えているのがカーネーションの出荷だ。

河津町と東伊豆町をあわせた生産量は静岡県内全体の約9割を占め、多い時には1日に4万本から5万本を首都圏に出荷する。
ただ、生産者の山田巧さんは「昨夏の猛暑の影響がいまだに出ている。夏場に根がやられた」と話し、収量は例年より少ないという。

カーネーションを育てて半世紀余りという吉田重好さんのハウスも、一見すると例年通りに育った花々に見えるが「(暑さに)弱い品種で、土の中に病気があると枯れてしまう。3月の彼岸の頃にはこんな感じではなかったが、この1カ月くらいで暖かくなりバタバタと枯れてしまった」と肩を落とした。
そこに来て追い打ちをかけているのが昨今の原油高や物価高だ。
吉田さんがカーネーションの栽培を始めた53年前に1リットルあたり25円だったA重油も現在では118円と4倍超となり、それに伴いビニールなどの資材のほか、肥料、農薬の値段も高騰。
それだけに「本当に大変。そういうことをみんなに知ってもらいたい」と口にする。
約1100坪の敷地で計16棟のハウスを管理している吉田さん。

夜間は暖房装置を使ってハウス内を暖めているが、一晩に使用する燃料は500リットルから600リットルと経営を圧迫する要因になっているだけに、1本でも多くのカーネーションを出荷したいのが本音で、「枯れると収量はもちろん減り、(収入が)マイナスになる。だから夏の暑さに強いもの、夏から秋にかけて病気にならないものなど品種選びがこれからなお重要になる。その辺がこれから一番の課題」と説明する。
県は新たな栽培技術の開発へ
農業技術の研究や開発に取り組む静岡県伊豆農業研究センターによると、花も動物と同じで厳しい環境下に置かれると病気に対する抵抗力が弱まり枯れやすいとのことで、藤井俊行 研究員は「夏の暑さを遮る遮光技術や夏を避けた新たな作型の開発といった栽培技術の開発に取り組もうとしている」を話す。

母の日には欠かすことのできないカーネーション。
“異常気象”が異常でなくなりつつある中、即効性のある解決策はまだ見つかっておらず生産者にとっては苦しい我慢の時が続きそうだ。
(テレビ静岡)