ひとりの場所で自主性が育まれる

「何をしているか見えないから、ひとりの場所を与えたくない」と話す親がいます。

宿題などはリビングでやるほうが、学力は上がるという声もあります。また、親子の会話を円滑にするために、家族みんながリビングに集まる文化をつくったほうがいいと言われています。

子どもも「ひとりで集中」する環境が大事(画像:イメージ)
子どもも「ひとりで集中」する環境が大事(画像:イメージ)

しかし、ひとりで集中する環境も大切です。ひとりで自由に学べる場所が自主性を育みます。

「ひとりで何をしているの!どうせ隠れてゲームしているんでしょ。家族でいる時間も大事なんだから、なるべくリビングで過ごしなさい!」

ではなく、

「この場所はあなただけの場所だから、自分で工夫して使ってね」

と認めることが大切です。

子どもの過ごし方を見て場所を考える

家族と対話し、自分自身と対話する。その繰り返しが、「自主性」につながります。

新しく場所をつくる必要はありません。どこが適しているか、まず子どもの行動を見つめ直してください。

何が好きなのか、どんなことをして1日を過ごしているのかを見て、「場所」を考えていきましょう。ひとりで夢中になれる場所は、人によって違います。子どもと話し合って、一緒に決めるのも大切ですね。

私の家庭は部屋の端っこの3畳ほどのスペース。ダンボールに囲まれており、ミシンやグルーガンなど、さまざまなものがあります。きれいに整理はされていませんが、私たち親からは特に何も言いません。

長男は毎日6時には起き、そこで黙々と作業をしています。そんなときは、邪魔をせず、見守っていましょう。たまには、声をかけて、子どもの成果を聞くようにしています。

ひとりで自由に学べる場所が、自主性を育みます。ひとりで集中できる場所をつくってあげてください。

『子ども教育のプロが教える 自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』(ダイヤモンド社)

庄子寛之
ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター 主席研究員。元東京都公立小学校指導教諭。東京学芸大学大学院教育心理学部臨床心理学科修了。道徳教育や人を動かす心理が専門。著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)などがある。

庄子寛之
庄子寛之

ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター主席研究員(2025年4月から)。元東京都公立小学校指導教諭。東京学芸大学大学院教育心理学部臨床心理学科修了。道徳教育や人を動かす心理が専門である。
教育委員会や学校向けに研修を行ったり、保護者や一般向けに子育て講演を行ったりしている。研修・講演は年間150回以上。20年近くの教員生活で教えた児童は5000人以上。講師として直接指導した教育関係者は1万5000人に及ぶ。
また、ラクロスの指導者としての顔を持ち、東京学芸大学女子ラクロス部監督、U-21女子日本代表監督、U-19女子日本代表監督を歴任。子ども教育のプロとして、NHK「おはよう日本」や朝日新聞、毎日新聞などのメディアなどにも取り上げられた。著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)などがある。