企業への熱中症対策義務化を見すえ、ワークマンが「着る方が涼しい」ウェアなど熱中症対策の新商品約200点を発表した。専門家は、差別化された高機能・低価格の商品が新たな市場を生み、競争力につながっていると分析する。

熱中症対策で“着る冷蔵庫”も強化

早くも暑い夏を涼しく感じさせる熱中症対策の服が発表された。

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薄手ながらも、UVカット機能を備えたフェイスガード付きのパーカー「クールUVフェイスガードパーカー」1500円。

水分補給や休憩の目安が分かる、アラート機能付き暑熱バンド「アラート機能付き暑熱バンドPRO」2900円。

ワークマンが8日に開催した「WORKMAN酷暑対策 新製品発表会2025」では、こうした熱中症対策商品約200点が展示されていた。

ベストの内側には氷のように冷たい冷却プレート
ベストの内側には氷のように冷たい冷却プレート

浅川由梨子記者:
こちらのベストの内側には、冷却プレートが付いています。触れてみると、氷を触っているように冷たいです。

従来は3カ所だった冷却プレートを、新製品では5カ所に増設した “着る冷蔵庫”の「ペルチェベストPRO2」 1万9800円(通常版)など、2025年は、企業で適切な熱中症対策が、罰則付きで義務化される方針であることを商機に捉え、対策商品を強化した。

中でも、力を入れるのが、日本赤十字の研究所と共同開発した世界初の“着る方が涼しい”ウェアをコンセプトにした商品「XShelter 暑熱軽減フーディー」2900円だ。

例えば、室温が50度の部屋で着用すると…。

浅川由梨子記者:
ライトの近くに立つだけで夏のような暑さを感じますが、このウェアを着てみると、着ていなかったときより、断熱効果があるので、暑さを感じにくいです。

表側は、日傘のような断熱素材が使用され、サーモグラフィーで比べてみると、ウェアを着ている部分が青くなっていることが分かる。

さらに、紫外線を当てると、ロゴが白から青に変化する。このように、危険を「見える化」する技術など、14の機能が搭載されている。

ワークマン・土屋哲雄 専務取締役:
(XShelterは)作業に向いているが、この前の冬モノは8割くらいが一般客。今回は、普段使いを視野に入れ、色んな製品を作っている。

去年と比べ、1カ月半ほど熱中症対策の発表を前倒しにしたワークマン。

その理由について、企業の担当者は、年々厳しさを増す暑さにより“販売戦略の変化”が求められていると説明する。

ワークマン・土屋哲雄専務取締役:    
(暑さが続くのが)4月から10月まで半年になっているから、(展示会を)早めにやった方がいいと。我々(の商品は)、猛暑の前に、本当は防寒が強かった。ところが防寒の(売れ行きの)落ち具合がひどい。売り上げも2年ぐらいで猛暑の方が増えたので、もう伸びる分野は猛暑しかない。頭の中は猛暑しかなくて毎日考えている。

「高機能&低価格」で独自市場を開拓

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
熱中症対策という高い機能性、どうご覧になりますか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
国内のアパレル市場は、少子高齢化と人口減少の影響で、市場の拡大による恩恵は期待しにくい状況です。

こうした環境下で企業が利益を生み出すためには、自らの手で「高い価値」を創り出す姿勢が求められます。

顧客にとっての高い価値とは、差別化された商品であり、ワークマンの場合は、「高機能と低価格」という、他のブランドにないユニークな価値を提供しています。

堤キャスター:
その、他にないユニークな価値とは?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
ワークマンは、高機能で低価格という、4000億円の新たなアパレル市場を創り出し、ここで独自のポジションを築いています。

例えば、高い機能性のアパレルというと、ノースフェイスやパタゴニアなどがありますが、ワークマンの場合、高い機能性がありながら、アウトドアブランドよりも、低価格を実現しています。

もう一つ、低価格でありながら、デザイン性も高いGUやH&MなどのSPA(製造小売業)がありますが、ワークマンは価格を抑えながら、機能性を追求したシンプルなデザインで人気となっています。

ターゲット拡大でもぶれない差別化

堤キャスター:
誰に売るのか、ターゲットの設定も大切かと思いますが、これについてはいかがですか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
現場のプロに支持されてきたワークマンが、メンズ・ウィメンズ・キッズとターゲットを広げてきましたが、一貫して、優れた機能性を徹底的に追求して、それを低価格で提供することで、軸のぶれはありません。

具体的には、「#ワークマン女子」や「Workman Colors」などの一般消費者をターゲットとした店舗においても、機能性を備えたタウンユースのファッションを展開し、単なるトレンド志向のファッションブランドとは一線を画しています。

堤キャスター:
低価格で高品質の競合ブランドの登場などは、あり得るのでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
1つの業界で、複数の勝者が共存できます。大事なのは、それぞれのブランドがユニークで圧倒的な差別化を磨き続けることです。

ワークマンが「高機能と低価格」をどう進化させていくのか、今後も楽しみです。

堤キャスター:
暑い夏をどうしのげばいいのか、これは大きな課題でもあります。どんな気候の中でも、快適に過ごせる選択肢が広がることを期待したいです。
(「Live News α」4月8日放送分より)