イギリスの首都ロンドンで今、深刻な問題となっているのがスマホを狙った犯罪の急増。2020年と比較すると3倍以上で、ヨーロッパのどの都市よりも多いという。
犯行は、電動バイクを使った巧妙な手口で、ほとんどのひったくり犯が黒ずくめの服装に目出し帽を着用しているという。なぜ、ロンドンでこれほどまでに増えているのか――。
ロンドンで急増“スマホひったくり”
世界有数の観光都市であり、多くの日本人旅行者も訪れるイギリスの首都ロンドンで今、深刻な問題となっているのが、スマホを狙った犯罪の急増だ。

最新の統計によると、2024年にロンドンでは7万137台のスマートフォンが盗難被害に遭った。
これは前年に比べ約40%増加しており、2020年と比較すると3倍以上で、ヨーロッパのどの都市よりも多いという。
ロンドン市民に話を聞くと、実際に犯罪を目撃したという証言が次々と出てきた。

目撃者:
8~9カ月前、自転車に乗った男が女性の携帯を奪い走り去るのを目撃しました。女性は絶望した表情で、どうしたらいいか分からない様子でした。

中には「何度か目撃しています。以前はモペットを使った犯行が多かったですが、最近は自転車を使うケースが増えています。特に観光客が多い」と話す人もいた。
全身黒ずくめ…巧妙な犯行の手口
市民の口から出てきたのは“モペット”や“Eバイク”と呼ばれる電動バイクの名前だった。
その犯行の手口は、電動バイクを使った巧妙なものだった。

ひったくり犯の多くは自転車や電動バイクにまたがり、歩行者の後ろから静かに接近し、隙を見てスマホを奪い、猛スピードで逃走している。

悪用されている電動バイクは、どういったものなのか。「Eバイク」は一見、日本の電動アシスト自転車のようなものだが、足でこがなくても前に進むことができ、かなりのスピードが出る。

さらに、バイクと違って音がほとんど出ず、走行音がとても静かなため、気づかれずに人に近づくことができる。

イギリスの法令では、Eバイクの最高速度は時速25kmとなっているが、違法に改造されたものは、時速50km以上出るようになっているという。

さらに、組織的な犯行なのか、映像を見ると、ほとんどのひったくり犯が防犯カメラなどに特定されないように黒ずくめの服装を身にまとい、目出し帽を着用して顔を隠していた。
彼らは携帯を奪ったあと即座に共犯者に渡すため、被害者は誰を追いかければよいのか分からなくなってしまうのだ。
「3回も被害に…街全体の問題」被害女性が語る
ロンドンに住むサハルさんも、最近被害に遭った1人だ。サハルさんが被害に遭ったのは、スマホを触りながら自宅に帰る途中だった。

サハルさんに当時の状況を「突然後ろから手が伸びてきて、すごく強い力で奪われた」と振り返る。
実はサハルさん、被害は1回だけではないという。

スマホひったくりの被害に遭ったサハルさん:
実は3回も被害に遭っているんです。ええ、よく「一度なら相手のせい、二度なら自分のせい」って言いますよね。でも、これは単に私の不注意ではなく街全体の問題だと思います。
イギリスの警察も対策に本腰
なぜ、ロンドンでこれほどまでに増えているのか。

セキュリティー会社の専門家に聞いてみると、「ロンドンは人口が非常に多く、観光客もたくさん訪れます。そのため毎日多くの人々が街を行き交い、中にはこの問題の深刻さを知らない人もいます」という。

では、盗まれたスマホはどこへ行くのか。ロンドン警視庁のデータによると、盗まれたスマホはアルジェリア、次いで中国、ナイジェリア、ロシア、ブラジルなどに運ばれているそうだ。
さらに、携帯がそのまま売れない場合は分解され、画面やマザーボードなどの部品として売りさばかれることもあるという。
事態の悪化を受けて、イギリスの警察も対策に本腰を入れ始めている。

ロンドン警視庁は2025年2月の1週間で、スマホひったくりに関与した230人を逮捕し、1000台以上の携帯を押収した。

さらに2025年2月には、警察がGPS追跡で特定された盗難スマホの隠し場所を「裁判所の令状なし」に捜索することができるようにする新法案も議会に提出された。

スマホを盗まれたサハルさんは「この問題は本当に深刻です。私の周りには被害に遭った人か、被害に遭った人を知っている人しかいません。それほど広がっています。解決策が見つかることを願っています」と話す。
深刻な社会問題となっている、ロンドンで急増するスマホひったくり被害。
日本から訪れる旅行者も、警戒の意識が求められている。
(「イット!」4月8日放送より)