「大丈夫です」
育成中の若手や部下にこう言われたら、上司のあなたはどう捉えるだろうか。
全く「大丈夫」ではないけれど怒られたくないと思っている…。それとも全く「問題ない」状態なのか…。
この「大丈夫」という言葉は若手・部下へのやりとりに限らず、ビジネスにおいてスムーズな意志疎通を阻んでいるという。
多くのリーダー層が彼らの育成で悩むのが「伝え方」だ。パワハラを気にして「言いたいことがいない」と悩む人も多くいる。
「相手を『腹落ち』させたいときの伝え方のコツ」をまとめた、“伝え方のプロ”ひきたよしあきさんの著書『若手はどう言えば動くのか? 相手を「腹落ち」させたいときの伝え方』(日経BP)から一部抜粋・再編集して紹介する。
相手を気遣う「大丈夫」で混乱
■Case:
「大丈夫です」と言ってトラブルを隠そうとします
■お悩みへのAnswer:
「大丈夫」はくせ者ワード。曖昧言葉をビジネスから排除せよ
トラブルはすぐに共有する。これも「当たり前のビジネス習慣」ですが、若手のなかにはハードルが高いと感じる人もいます。
さらに「大丈夫です」という言葉が、本音を分かりにくくしています。
教え子の学生や若い人と食事をしているときのこと。「デザート、食べる?」と尋ねると、「大丈夫です」とにっこり笑いながら言われます。ここで悩みます。
(1)まだおなかに余裕があるから、大丈夫(=食べる)なのか。
(2)ここまでの食事で満足しているから、大丈夫(=食べない)なのか。
確認すると、正解は(2)。「もう結構です」の意味で「大丈夫です」と答えていました。

「いらないです」などと言うと言葉がきつ過ぎて、私が傷つくのでやわらかく表現したといいます。しかし、この気遣いのせいで、意志疎通がすんなりできなくなっています。
だから、若手が「大丈夫です」と言った場合は、細心の注意が必要です。
もしかすると相手は、仕事を完成する見込みがあるから「大丈夫」と言っているのではなく、完成できないけれど、きつい言葉を返したくないから「大丈夫」と言っているのかもしれない。
あるいは、仕事によって自分のメンタルが弱っていないかを聞かれたと勘違いして、「はい、(私のメンタルは)大丈夫です」と答えている可能性もあります。
まず、「大丈夫」という言葉がくせ者だと認識しましょう。