新入社員が配属されたり、異動で新しい人材がやってきたりすると、悩ましいのが指摘や注意の伝え方だ。
「パワハラだと言われるのが怖くて、強く注意できない」と尻込みしたり、ネガティブなことを言えず、褒めているのか甘やかしているのか曖昧な言葉ばかりになってしまう。
そんなミドル層の悩みをケースごとに「答え」を探し、成長とチームの戦力になってもらうための「伝え方」を紹介するのが、“伝え方のプロ”でスピーチライターのひきたよしあきさん。
明治大学や早稲田大学などで1万人以上のZ世代の指導にもかかわり、300以上の企業や行政機関でコミュニケーションスキルを教えている。
著書『若手はどう言えば動くのか? 相手を「腹落ち」させたいときの伝え方』(日経BP)から、「相手を褒めてばかり。甘やかしているようでモヤモヤする」という悩みを、一部抜粋・再編集して紹介する。
私が「全肯定BOT」である理由
■Case:
相手を褒めてばかり。甘やかしているようでモヤモヤします
■お悩みへのAnswer:
褒めると甘やかすは別物。若手を伸ばすのは「根拠ある承認」
私は、学生たちに「全肯定BOT」というあだ名をつけられています(BOTとは、自動的に物事の処理を行うプログラムのことです)。
どんなネガティブな話題でも、ポジティブに変換する。なに1ついいところがないように思える学生の回答にも、長所を見つけてコメントする。
キャンパスを歩いていると「あ、全肯定BOTだ」と声が上がるほど、褒めることを主体とした講義をしています。

なぜ、褒めるのか。これには理由があります。
少し古いデータですが、私が博報堂に勤務していた2017年、博報堂生活総合研究所が、「SNSの自分の投稿に対する『いいね』などのリアクション」をお金に換算するといくらになるか、というアンケート調査の結果を発表しました。
1回の「いいね」は平均556円。「10円くらいだろう」と軽く見ていた私は衝撃を受けたのです。さらに興味深いのは、リアルで受け取るリアクションの価値。「目上の人から褒められる」は2216円だというのです。