若手や部下を注意する際、「パワハラ」という言葉がよぎり、思うような注意ができずもどかしい思いをしたことはないだろうか。

若手を動かすために大切な「伝え方のコツ」は、相手の価値観を容認した上で、丁寧に説明する姿勢だという。そして「甘やかし」や「猫なで声で機嫌を取る」こととは違うとする。

こうした考えを示すのは、明治大学や早稲田大学などで1万人以上のZ世代の指導にもかかわり、300以上の企業や行政機関でコミュニケーションスキルを教える、“伝え方のプロ”ひきたよしあきさん。

必要な注意の伝え方に加えて、若者の行動変容も促す言葉も触れている、著書『若手はどう言えば動くのか? 相手を「腹落ち」させたいときの伝え方』(日経BP)から一部抜粋・再編集して紹介する。

若手に核心を突けない発信が増加

■Case:
パワハラだと言われるのが怖くて、やんわりとしか指導できません

■お悩みへのAnswer:
「守ってほしいポイント」を絞って、事前に周知しておく

ここ10年弱の間に「働き方改革関連法」や「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」など、働き方に関する法律が次々、施行されました。

部下を持ち始めたばかりの人からその上の上司まで、会社全体が、どのように若手を指導していいか分からない…それが正直なところではないでしょうか。

パワハラを恐れてふわふわな発言の上司に若手も不安になる(画像:イメージ)
パワハラを恐れてふわふわな発言の上司に若手も不安になる(画像:イメージ)
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「こう言うとパワハラになるかな?」と思って、言いたいことが言えない。猫なで声でのふわふわした発言が増えるから、若手も「こんな会社で大丈夫かな」と不安になる。悪循環になってしまいます。

しかし、本当に強く注意するだけでパワハラになるのでしょうか?厚生労働省の「職場におけるハラスメント対策パンフレット」(2024年11月)によれば、職場におけるパワハラとは、

(1)優越的な関係を背景とした言動であって、
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
(3)労働者の就業環境が害されるもの

であり、(1)から(3)までの3つの要素をすべて満たすものだとされています。