背番号10をつけてサッカーコートを駆け回る男性。

90歳の中村隆さん。富山県シニアサッカー連盟が認める県内最高齢の現役プレーヤーだ。

「年下」の70代、80代のチームメイトに負けないハツラツとしたプレー。

生涯現役を謳歌する元気の秘訣を聞いた。

ゴール前に駆け上がりボレーシュートを放つ中村さん
ゴール前に駆け上がりボレーシュートを放つ中村さん
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春の陽気に包まれた日の富山市の陸上競技場。

中村さんは所属するシニアサッカーのクラブチームの屋外練習をしていた。

クラブの名は「あしがるサッカー富山」。メンバーは60歳以上だ。

去年秋、大阪の堺市で開かれた西日本の大会で最高齢選手として表彰された中村さん。

驚くのは、そのボールさばき…。

ボレーシュートも決めて見せた。

健康的に生活できる期間を示す「健康寿命」。日本人男性の平均は72.57歳だ。

メンバーの多くはその平均を超えているが、中でも際立つのが90歳の中村さん。

その存在はチーム全体に活力をもたらしている。

*クラブのメンバー 

「すごいんですよ、この人。うちらの見本で。いつも中村さんを見て力をもらっている。」

この日、中村さんが向かったのは、富山市総合体育館。

サッカーができる体力を維持するため、週2回トレーニングを続けている。

ウォーキングも時速5キロを超えるペースで30分間歩き続ける。

ふらふらになるまで、自分を追い込む中村さん。

なぜそこまでやるのか尋ねると…。

*中村隆さん    

「いまの現状を何とかキープしながら、このあとね、金沢の大会とか福井の大会、秋には大阪の大会いろいろあるもんだから」

(Qトレーニングは楽しい?)

「苦しいこともあるけど楽しい。苦しいだけだったらとてもじゃないけど」

中村さんは第二次世界大戦が始まる少し前の1934年、富山から中国・大連市に渡った両親のもとで生まれた。

太平洋戦争の最中、南満州鉄道で働いていた父親が亡くなり、命からがら富山に戻った中村さん。

そのサッカーの原点は高校時代にあった。

終戦から5年後、焼野原からの復興真っ只中にあった1950年、中村少年は富山中部高校に進学。

生涯楽しむことになるサッカーとの出会いは、こんなきっかけだった。

*中村隆さん

「野球部に入ったけど、10日ほど経った時にサッカー部の安井という先輩から『サッカーをやらないか』と引っ張り込まれた。サッカーをやったら止まらないようになってしまった」          

高校卒業後、中村青年は北陸銀行に就職。

そろばんはじきの傍ら、地元のクラブチームや銀行の部活動でサッカーを続けていた。

それでも、当時優先しなければならなかったのは、やはり仕事…。

転勤でチームから離れることもあった。

サッカーに思いっきり打ち込めるようになったのは定年後。

*中村隆さん

「あしがるサッカーで本当にサッカーらしいサッカーができるようになった」   

この日はあしがるサッカーでできた生涯の友と一杯片手に焼肉をペロリ。

   

*夕飯を作りにきていた長女

「お父さんを見ていて、歯と筋肉と食事、それが長生きの秘訣だね」       

この日は練習試合。

中村さん、どんな対戦相手か気になる様子。

*チームメイト  

「オーバー30。30歳以上」

*チームメイト   

「めちゃくちゃ強い」   

*中村隆さん  

「そっか…」       

相手は孫ほど歳の差がある女子チーム。

*監督 松田利幸さん

「メンバー、バック、左から北野・・・、中村さん。」

練習試合とはいえ勝負は勝負。常に綿密な作戦で勝ちにこだわるのが「あしがるサッカー富山」だ。

中村さんにも指示が飛ぶ。

「パスは3タッチ以内で!」

年齢と体力の差をカバーするため相手を極力動かして疲れさせる作戦だったが、開始早々から相手に攻め込まれてしまった。

走る!90歳、県内最高齢の現役サッカー選手。

今年も、夢中でボールを追いかけるシーズンが始まった。

*中村隆さん

「これから体を作っていかねばならない。今年初めての試合ですから、これから徐々に体力をつけていかないと。」

富山テレビ
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