3月に解禁された来年春に卒業する大学生の就職活動は佳境を迎えている。企業の採用面接は6月からスタートし、すでに多くの学生が内定を手にしている状況だ。
「働きがい」と「福利厚生」を重視する学生たち
富山市など5つの市町村が6日に開いた合同企業説明会には、県内に事業所を持つ130社が参加。来年春に卒業予定の大学4年生や再来年卒業予定の3年生が各企業のブースを訪れた。
「働きがいや自分のしたい仕事を大事にしている」と語るのは2026年春卒業予定の学生だ。また別の同学年の学生は「大学で学んだことをいかせる業界だと一番やりがいを感じる」と話す。
一方、2027年春卒業予定の学生からは「"週休2日"や福利厚生を大事にしている」「みなさん自分の企業を推してくれるので(売り手市場を)感じますね」という声が聞かれた。
企業各社のユニークな採用戦略
キャリタスの調査によると、来年春卒業予定の大学4年生の先月1日時点での内定率は87.3%で、すでに4人中3人(全体の74.8%)が就職活動を終えているという。こうした状況を受け、企業は優秀な人材獲得に向けさまざまな工夫を凝らしている。
エネルギー関連施設の建設工事を行う企業では、将来の生活感をイメージした雑談から学生と打ち解け、会社説明をスタート。建設機械販売会社はブースに年間休日数や待遇面を大きく表示し、ハウスメーカーは30代以下で構成された若手採用チームが福利厚生や社内サークルの充実ぶりをPRした。
コマツ富山の山下剛志業務部長は「(会社に)定着していただくことが重要。社内の就業条件の改善が1つのポイントかなと思う」と語る。タカノホーム人材開発室の松井孝平係長は「(学生が)素の自分を見せるのは年が近い人や立場が近い人。年が近い僕らが学生のことを成長させ、最後は選考する」と若手中心の採用チームの狙いを説明した。
企業側から学生へ積極アプローチ
説明会では企業側のアピールタイムも設けられ、担当者たちが自ら学生のもとへ向かう場面も。
医薬品製造業を専門とする商社の広野の関口靖彦取締役は「商社に興味ありませんか?」「製薬業界は景気に左右されない業界」と学生に声をかけた。同社は過去5年間、募集を行っても新卒を採用できていないという。関口取締役は「なかなか待っているだけじゃ来てくれないですから。中小企業としては採用しづらい。はっきり言って非常に難しい」と苦労を語った。
自治体も工夫を凝らす
自治体側も学生を引き付けるための工夫を行っている。今回の説明会では初めて軽食を用意し、1日を通して滞在してもらう環境を整えた。また、県外に住む地元出身の学生の参加を促すため、交通費を最大1万円補助する取り組みも実施している。
人手不足が続く中、県内企業への就職を促進するため、自治体も企業も様々な努力を続けている。