民間主導の新たな取り組み、『熊本ウォーターポジティブ・アクション』がスタートした。半導体関連産業の集積によって減少が懸念される地下水の保全に、サントリーなどの大企業と大学、金融機関の産学金が連携して取り組む。
「水の国くまもとの更なる発展に貢献」
3月20日に熊本市で開かれた〈熊本ウォーターポジティブ・アクション〉の始動イベント。熊本県立大学の黒田忠広理事長は「産学金協働の〈熊本ウォーターポジティブ・アクション〉を始動します。地域の皆さまと共に、この取り組みを広げ、〈水の国くまもと〉の更なる発展に貢献します」と述べた。

木村熊本県知事や大西熊本市長ら立ち会いの下、熊本県立大学、熊本大学、肥後銀行、サントリーホールディングス、日本政策投資銀行、MS&ADインシュアランスグループホールディングスの産学金6者がアクション始動を宣言した。

熊本地域では半導体関連産業の集積に伴い、水需要が増大するとともに、農地などが工業地に転用されることで、降った雨が染み込む浸透域が減少。地下水の減少と自然環境の喪失が懸念されている。

こうした中6者は、降った雨を一時的に貯めてゆっくりと地下に浸透させる雨庭などグリーンインフラの導入により、水環境の保全〈ウォーターポジティブ〉と自然環境の再生・保全〈ネイチャーポジティブ〉を推進する。また、多くの事業者や市民が参加できる仕組みも構築するとしている。

雨庭は、地下水保全のほか、洪水防御や生物多様性の保全など多面的な機能を持つとされている。熊本県立大学の島谷幸宏特別教授は「降った雨が浸透しない都市部や工業地1ヘクタールの5パーセントに雨庭を整備することで、1ヘクタールの畑に1年間に浸透する分と同じ、1.4万トンの雨水を浸透させることができる」と雨庭の効果について説明した。

MS&ADホールディングス・サステナビリティ推進室のTNFD専任SVP・原口真さんは「この熊本の取り組みが世界でも最先端を行く取り組みになるのではないか、また、〈熊本モデル〉として世界的に認知されることを期待している」と述べた。

また、サントリーホールディングスの生物多様性統括・水グループ瀬田玄通部長も「私たちが届けている〈水〉や〈ビール〉も全て熊本の水の恵みで成り立っているので、それを永続的に将来につないでいくことが私たちにとって重要な使命だと思っている」と述べた。
(テレビ熊本)