将棋界、最高峰の戦い「竜王戦」第2局が2年連続で福井・あわら市で開かれた。開催を巡っては、対局会場となった温泉旅館が2000万円をかけて部屋を改装したり、飲食店が勝負めし、勝負おやつの開発を手掛けたりと地元をあげての取り組みがあった。対局後、佐々木八段は「こんなに注目されたことはなかった」と感激した様子。藤井竜王も「福井の温かさ」を口にした。

“恐竜”を前にポーズ
“恐竜”を前にポーズ
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“恐竜”も将棋バージョンに

10月15日午後、竜王戦あわら対局のため福井入りした藤井聡太竜王と佐々木勇気八段。

福井駅に到着
福井駅に到着

まず向かったのは、福井駅前にひしめく“恐竜”たちのところ。動くティラノサウルスのロボットを見上げ、2人は何やら言葉を交わす。
 

談笑する2人
談笑する2人

集まった報道陣のリクエストを受けながらフォトセッションに臨んだ。

ティラノサウルスとの一枚
ティラノサウルスとの一枚

駅の正面には、羽織袴姿で将棋を打つ“竜王戦仕様”の恐竜モニュメントが待ち受けていた。将棋盤には前年の竜王戦1日目が終了した時の盤面が再現されている。

2024年の竜王戦第2局の盤面を再現
2024年の竜王戦第2局の盤面を再現

佐々木八段は「1年ぶりに福井駅に来ましたが、恐竜もかなりバージョンアップしていて、竜王戦を盛り上げていただいている実感がありますね」と笑顔を見せた。さらに「これだけ多くの方を前に取材を受けることも珍しいのですが…」と戸惑いつつも「良い将棋を指せれば」と意気込んだ。

注目度に戸惑う佐々木八段
注目度に戸惑う佐々木八段

2年連続で佐々木八段の挑戦を受ける藤井竜王は「恐竜どうしの対局は、どうやら昨年の福井での竜王戦と同じ展開になっているみたいなんですが…私としては、昨年の対局は完敗でしたので、今年は、より白熱した戦いをお見せできれば」と話した。

リベンジを誓う藤井竜王
リベンジを誓う藤井竜王

対局だけではない地元への波及効果

竜王戦第2局の対局会場は、前年と同じあわら温泉の旅館「美松」で行われた。
  
16日午前9時過ぎから始まった対局は藤井竜王が終始、優位に進め、2日目の午後2時13分に佐々木八段が68手と少ない手数で投了するスピード決着に。藤井竜王はシリーズ2連勝とし、竜王戦5連覇へと大きく前進した。

藤井竜王が勝利
藤井竜王が勝利

対局を終え、美松の前田健二社長は「無事終えることができてほっとしている」と安堵の表情。さらには「勝負めし、勝負おやつは去年も今年も大行列になったと聞いて、竜王戦を誘致したことが地域の活性化につながっていると実感できた」と地元への波及効果を口にした。

対局が行われた旅館「美松」
対局が行われた旅館「美松」

2人の棋士も対局前、将棋以外に楽しみにしている事を聞かれ「勝負めし」と答えていた。さらに佐々木八段は「福井のおいしいカニを食べたいなとは思ってるんですけれど…いつもあと10日とか2週間後ぐらいに解禁なので、冬にまたプライベートで来て食べられたら」とも話していた。

「越前がにを食べたい」と話す佐々木八段
「越前がにを食べたい」と話す佐々木八段

今回、2人の棋士のために用意された勝負めし、おやつ、ドリンクは合わせて45品。この日のために地元の飲食店が手掛けた。
 
藤井竜王は勝負めしについて「どれを食べようか迷いつつも楽しく選んだ」といい、対局1日目の昼食には、地元産のしょうゆを使った「自家製だれのカツ丼」を選んだ。注文を受けた店主は「本当にうれしい。言葉には表せない。一人でガッツポーズした」と喜びを語った。
 
2日目の勝負めしは、2人が同じものをチョイスするという一幕もあった。
  
 

2人が選んだ勝負めし
2人が選んだ勝負めし

佐々木八段はフルーツ大福を“溺愛”!?

また佐々木八段は、前年に続いて勝負おやつに毎回、同じものを注文した。フルーツスイーツ店 みやびの「権三くんのなめらかプリンといちご大福」だ。あわら市のマスコットキャラクター・湯巡権三を焼き込んだ滑らかな口溶けのプリンと、いちごを白餡で包んだフルーツ大福のセット。

佐々木八段の“推し”おやつ
佐々木八段の“推し”おやつ

みやびの店舗を訪ねると、佐々木八段の写真やサインが飾られていた。
 
代表の坂井雅義さんは「プレッシャーをひしひしと感じていて、選ばれたと電話があった時は飛び上がって安堵した」という。

店内にはサイン
店内にはサイン

実は佐々木八段、前年の竜王戦でも午前と午後に合わせて4回、勝負おやつには全て「みやび」のフルーツ大福セットを選び、帰り際に店を訪れお土産用にも購入したという“溺愛”ぶりだった。
   
坂井代表は「新幹線の効果はあまり実感できていないが、竜王戦の効果は絶大。竜王戦を機に、まちがもっと盛り上がってくれれば」と期待を寄せた。

お土産にも持ち帰ったという
お土産にも持ち帰ったという

足湯であわら対局の「感想戦」

対局から一夜明けた週末には、芦原温泉駅の施設でイベントが開かれ、竜王戦にちなみ巨大な将棋の駒で将棋崩しを楽しむコーナーもお目見えした。
  
もちろん、勝負めしが味わえるキッチンカーも登場。2人の棋士が選んだメニューは特に人気を集めていた。
  
佐々木八段が対局2日目の昼に選んだタコスを提供する店主は「電話がかかってきた時はうれしかった。あわらがにぎやかになって欲しいし、佐々木八段に頑張ってほしい」と期待を込めた。

佐々木八段が選んだタコス
佐々木八段が選んだタコス

イベント会場では、2人の棋士がファンの前に登場。事前に子供たちから寄せられた質問に答えた。
 
子供の頃に好きだった遊びを聞かれた藤井竜王は「ブロックやプラレールとか好きでした」と答えた。佐々木八段は「田んぼでザリガニをつかまえるのが好きでした」と意外な一面ものぞかせた。

詰めかけたファンの前に登場
詰めかけたファンの前に登場

あわら温泉街にある足湯で報道陣に向けての「感想戦」をした2人。藤井聡太竜王は「2回目の竜王戦だからこそ、福井の皆さんの温かさを感じた」と印象を語った。
  
第2局は負けてしまった佐々木勇気八段は「藤井竜王の作戦に付いていけるように自分も力をつけないといけない」と自身の目標を語るとともに「こんなに竜王戦が注目されることはない。ぜひ若手棋士の勉強会を福井で開きたい」とした。

足湯での「感想戦」
足湯での「感想戦」

対局を見届けた人やイベントに参加した人など、竜王戦を通じて熱気に包まれたあわら市。 「将棋がこのまちに根づいていく」そんな期待を抱かせる週末となった。

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福井テレビ
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