昨今の訪日観光客は、東京や大阪といった大都市圏だけでなく、地方都市にも目を向けている。

日本の観光市場は盛り上がりを見せているが、一方で地方がその観光業で稼げていないなど多くの課題もある。

さまざまなキャリアを積み、現在は8つの自治体と観光の現場に立ち、マーケター目線で問題解決を図る、永谷亜矢子さんの著書『観光“未”立国~ニッポンの現状~』(扶桑社新書)から観光産業の当事者が取り入れるべきことの一部を抜粋・再編集して紹介する。

空き家ワースト都市の挑戦

住人や利用者が去ってもぬけの殻となった空き家、つまり見過ごされてきたスペースを活用した観光施策を紹介します。

山梨県は、すべての住宅に占める空き家の割合を示す空き家率が例年、20%ほどで推移していて、2023年までは毎年、全国最多を記録していました。

富士山人気で需要がある山梨・富士吉田市も空き家は多い(画像:イメージ)
富士山人気で需要がある山梨・富士吉田市も空き家は多い(画像:イメージ)
この記事の画像(5枚)

富士山のふもとに位置し、人気遊園地の富士急ハイランドがある富士吉田市も例外ではありません。昭和までは織物産業で栄え、西裏と呼ばれる繁華街は200店もの飲食店が軒を構え、芸者さんたちが奏でる三味線の音が鳴り響く関東屈指の歓楽街だったそうです。

しかし、現在では空き家の居抜き物件の多い地域となっています。外国人観光客の富士山人気で玄関口としての需要がある富士吉田市は、宿泊施設が盛り返していて、西裏エリアもその余波で活気を徐々に取り戻しているものの、空き家はまだまだ多いままです。

富士急ハイランドとコラボ

この空き家が続く街並みを逆手にとって、富士吉田市と富士急ハイランドなどがコラボして2019年に催したのが、「西裏×戦慄迷宮コラボイベント『ゴーストナイト』」です。

富士急ハイランドでは戦慄迷宮という廃病院を舞台としたお化け屋敷があるのですが、ここに滞留するゾンビたちが西裏にやってきたという建付けです。