陸上界に楽しみな新星が現れた。福岡県の太宰府東中学校3年の今村好花(いまむら・このか)選手(15)。女子100メートルハードルで、中学の日本記録を塗り替える快挙を成し遂げた。その驚異的な速さの背景には卓越した技術と、母との強い絆があった。

今村好花選手
今村好花選手
この記事の画像(10枚)

驚異のタイム「13秒28」

7月6日に北九州市であった大会。今村選手はこれまでの中学の日本記録「13秒42」を0秒14も更新する13秒28というタイムをたたき出した。さらに驚くべきは、その後の県大会でも予選・決勝と、自身の持つ日本記録と同じタイムを連発したことだ。

女子100メートルハードルで日本記録更新
女子100メートルハードルで日本記録更新

まさに“無双状態”ともいえる活躍だが、当の本人は至って冷静だ。「毎回新しい発見があります。ここを改善したらもっとタイムが伸びそうとか、考えています」(今村選手)。

日本一の称号にもおごることなく、常に先を見据える。その探求心が彼女の強さの根源なのかもしれない。

今村好花選手
今村好花選手

速さを生む「スタートの8歩」

小学6年でハードルを始めて4年目。今村選手の最大の武器は、スタートから最初のハードルに到達するまでの加速力にある。「スタートの8歩で、どんどんスピードが上がっていくところが強みです」と彼女は自己分析する。

レース映像をスローで見ると「スタートの8歩」で一気に加速した今村選手が最初のハードルを越える時点で、すでに他の選手をリードしているのが分かる。

「スタートの8歩」で加速
「スタートの8歩」で加速

試しに学生時代に陸上競技を経験した男性記者が今村選手と対決。今村選手はスタート直後、一気にトップスピードに乗り、記者をぐいぐい引き離す。記者はハードルを跳ばないにも関わらずついていくことができない。

陸上競技の経験がある記者(左)と対決
陸上競技の経験がある記者(左)と対決

所属するクラブチームの溝上雅彦コーチは今村選手の技術面に加え、精神的な強さを評価する。「とにかく本番にすごく強い。試合になるとスイッチが入って、勝負強い選手です」。

溝上雅彦コーチ
溝上雅彦コーチ

持ち前の勝負強さと脚力で数々のタイトルを手にしてきた今村選手。自宅のリビングルームには、これまで獲得した栄光の証が並ぶ。

数々のタイトルを手に
数々のタイトルを手に

二人三脚でつかんだ記録

その活躍を最も近くで支えてきたのが母の和恵さんだ。「もともと料理は苦手だったんですが、アスリートの食事は大事ですから。栄養のことを考えて作っているうちに、徐々に好きになってきました」(和恵さん)。そんなお母さんが作ってくれる食事は「めっちゃおいしいです!」(今村選手)とはにかむ。

和恵さんは栄養バランスを考えた食事はもちろん、週4回、練習拠点のある北九州市まで送り迎えを続けている。

母の和恵さん(左)が活躍を支える
母の和恵さん(左)が活躍を支える

そんな母の献身的なサポートに今村選手は結果で応えようとしてきた。今村選手の精神的な成熟ぶりには、母の和恵さん自身も驚かされることもあるという。「考え方がびっくりするくらい大人な時もあります。私が落ち込んでいても、娘はすぐに切り替えて前に進んでいる。15歳なのにすごいなと」。

一方の今村選手はこう語る。「大会で記録が出なくても私は1日で終わらせるけど、こっちはもう切り替えているのに、お母さんが『何がダメだったかな、食事がダメだったかな』とか落ち込んでいるから、『えっ?』みたいになるときもある」。

今村好花選手
今村好花選手

「本当に感謝しかない」

まさに親子でつかんだ日本新記録。「洋服やご飯、暑さ対策まで全部用意してくれる。母も仕事から帰ってきて座るひまもないくらいですから、本当に感謝しかありません」(今村選手)。

去年、中学2年で全国大会(全中)を制した彼女が狙うのはもちろん2連覇だ。「全中では、今までで一番良い笑顔をお母さんに見せられるように走りたいです」(今村選手)。再び記録を更新しての圧倒的な優勝へ。15歳のハードル女王は静かに闘志を燃やしている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。