ただ、ここで誤解しないでもらいたいのは、高付加価値=高単価という意味ではないこと。観光業界では「価値を高めよう」という号令が至る所で聞こえてきますが、「従来のプログラムを単に値上げしているだけ」というケースも多く見られます。

もともと人気がある商品であれば大した手間はかけずに高単価にする手法があるかもしれませんが、今まで売れていなかったモノなのに、価格を高くしたところで、ますます売れなくなるだけです。

高付加価値とはただ高額にするのではなく、価値を高めることです。価値を高めるにはどうしたらいいか。「これは本物だ」と観光客が体感できる仕組み作りだと、私は考えます。本物の価値は揺るぎない体験価値となるのです。

新茶の時期にお茶を売る挑戦

日本三大美肌の湯として知られる佐賀県の嬉野(うれしの)温泉は、茶葉の一大産地でもあります。そして、お茶を飲みに嬉野を訪ねてもらう「ティーツーリズム」でにぎわい始めています。

嬉野温泉(画像:イメージ)
嬉野温泉(画像:イメージ)

地元では、茶農家、旅館経営者、吉田焼窯元などプレイヤーが「嬉野茶時(ちゃどき)」というプロジェクトを立ち上げ、茶畑の中に天茶台を作り、最高の見晴らしで、彼らが丹精込めて育てたお茶を振る舞う茶会を展開しています。

お茶をもっともおいしく飲めるのは、新茶が摘まれる3月から5月です。

ただ、茶摘みの繁忙期なので、もてなしから片付けまでの半日作業に時間を費やすことは不可能でした。そのため、新茶の旬の時期に茶会を開けないというジレンマを抱えていました。