鄙びた温泉街、迷路のような路地、静かにたたずむ木造駅舎…。

一度も来たことはないのに、なぜか懐かしく心惹かれる。

そんな、郷愁溢れる風景を求めて旅する「一人旅研究会」こと栗原悠人さん。

栗原さんが全国各地でカメラに収めた心揺さぶるシーンをお届けする。

写真・文=栗原悠人

大学一年の夏、人生初の一人旅をした。3日間普通列車に乗りっぱなしで辿り着いたオホーツク海沿いの小さな駅舎。初めて降り立ったあの駅は、自分の目に鮮やかに映る一方で、何故か懐かしく感じた。

初めて訪れた遠い地で、何故懐かしさを覚えるのだろう。

今まで多くの人の家路と旅路を結んだ駅舎の温かみに初めて触れてから、いつしかそんな駅舎のある風景を求めるようになっていた。

【北海道】北の大地にたたずむ駅舎

【北海道/釧網本線(せんもうほんせん)】

釧路湿原をはじめとした、国内屈指の雄大な景色の中を進む道東の路線。北海道で鉄道旅をするなら外せない区間でもある。

キハ40系気動車は、年々北海道の鉄路から姿を消しているが、訪問当時はまだ釧網本線にも当たり前のようにキハ40が走っていた。

窓を開けて頬で風を切りながら、夏の道東を感じていたのが懐かしい。

釧網本線藻琴駅(2015年9月撮影)
釧網本線藻琴駅(2015年9月撮影)
この記事の画像(10枚)

北海道釧網本線藻琴(もこと)駅。初めての一人旅で降り立った駅。10年も前になってしまった。