昨シーズン、26年ぶりの日本一に輝いた横浜DeNAベイスターズ。シーズン中の貯金はたったの「2」。貯金42の圧倒的王者・ソフトバンクに対し2連敗からの4連勝。下馬評を覆す下克上日本一だった。

そんなチームが2025年に目指すのはもちろん、27年ぶりのリーグ優勝と日本一連覇。「横浜奪首」をスローガンに日本一チームの新シーズンが始まる。

昨年のチャンピオンフラッグ
昨年のチャンピオンフラッグ
この記事の画像(9枚)

虎視眈々とレギュラーを狙うドラ1トリオの3連発

このキャンプで最も話題になったと言っても過言でもない、読谷で行われた中日二軍との練習試合は衝撃の幕開けだった。試合開始直後、先頭で打席に入った2023年ドラフト1位・度会隆輝(22)が初球を捉えライトスタンドへたたき込むと、2番の2019年ドラフト1位・森敬斗(23)、3番に入った2022年ドラフト1位・松尾汐恩(20)も続いた。試合開始からわずか4分、相手ピッチャーが投じたのはたった5球で、3本のアーチが生まれた。

度会隆輝選手
度会隆輝選手

2023年ドラ1・度会は昨シーズンはセ・リーグ新人初の開幕から2試合連続本塁打を放つ衝撃デビューを飾るも後半戦は失速、CS・日本シリーズに呼ばれることはなく、歓喜の瞬間はグラウンドの外で迎えた。
今シーズンを勝負の2年目と位置付けた度会は、昨シーズン途中に74キロまで落ちた体重を85キロまで増やしてキャンプイン。「ボールの見え方もよく、バットも振れてきている」という言葉通り、練習試合では21打数10安打(打率.476)と好調をアピール。今シーズンも実績のある日本一メンバーらと外野の定位置を争うことになる。

森 敬斗選手
森 敬斗選手

2019年ドラ1・森敬斗は昨シーズン自己最多の71試合に出場。日本シリーズは全試合ショートでフル出場し打率.300。打撃面では一定の数字を残したが、本人がインタビューの中で一番こだわりたいと語ったのは「盗塁数」。盗塁数を伸ばすためにも正遊撃手として上位打線で試合に出続けることが不可欠だ。
森の守備力向上の先に見えるのが、長年チームの課題とされている「ショートの固定」なのだろう。

松尾汐恩選手
松尾汐恩選手

そしてトリオの3人目はキャッチャーの松尾汐恩。2022年ドラフト1位で大阪桐蔭からDeNAに入団。翌年のキャンプでは高卒ルーキーでただ1人A班メンバーに抜てきされるなど期待値は群を抜いていた。そしてプロ2年目の昨シーズンは晴れて一軍デビュー、日本シリーズでもヒットを放つなど着々と力を付けてきている。

熱血コーチのもと、着々と力を付ける高卒3年目キャッチャー・松尾汐恩

2月9日、室内練習場で松尾は謎の呪文を唱えていた。
「ベロ1!」「歯2!」「タコ3!」。

相川亮二コーチ
相川亮二コーチ

よく見てみると相川コーチが、舌を出したら「ベロ」、タコのような口にしたら「タコ」、歯を見せたら「歯」、その後ろにつく数字は相川亮二コーチが腰のあたりで立てた右指の本数を答えているようだった。
これは相川コーチ考案の間接視野や周辺視野を鍛えるためのトレーニング。相川コーチは“心眼トレ”と呼ぶ。“心眼トレ”直後の相川コーチを直撃した。

インタビューに答える相川コーチ
インタビューに答える相川コーチ

相川コーチ:
周辺視野を鍛える練習は昭和のときもやっていた。僕なりにアレンジしたんですけど。
この練習が何の意味があるのかをちゃんと言語化してもらえずこなしていたということがすごく多くて、それが必要な理由をちゃんと説明できて、伝えてあげて練習することに意味があると思う。
ボールが過ぎる瞬間にボールは見ているけど、体の動きやどんなタイミングでどんな風にバットが出てきているかぐらいは絶対に見てもらわないといけない。盗塁を刺すときなど何にでも応用が利くので、そこはキャッチャーに必ず必要な能力。

練習終わりの松尾に相川コーチの“心眼トレ”について聞いてみた。

松尾:
難しかったです。全然わからないです。ぼやーっとしか見えないので難しかったです。

全く正解しなかったという松尾だが、相川コーチが求めるのは正答率ではない。

心眼トレーニング中の松尾選手と相川コーチ
心眼トレーニング中の松尾選手と相川コーチ

相川コーチ:
トレーニングなので意識をまず持つこと。完璧に正解してほしいというのはない。見ようとする努力が一番大事で、実際僕も「顔の表情を見ろ!」と言われてやっていたが、そんなの見えるわけない(笑)。バッターの動き、タイミング、バットの出方を観察、洞察するようなトレーニングです。

相川コーチの指導を受けるキャッチャー陣
相川コーチの指導を受けるキャッチャー陣

山本祐大が正捕手の座をつかみ、控えに戸柱恭孝、伊藤光らベテラン勢がいるなど、ベイスターズのキャッチャー陣は層が厚い。松尾は去年は二軍で打率.326、3本塁打を残すなどバッティングは好調だった。相川コーチの“心眼トレ”で守備力も一層強化し一軍での活躍を誓う。

松尾:
コンディションも絶好調でケガなく無事にこれているので、このままいければと思います。

27年ぶりのリーグ優勝、そして日本一連覇を狙うチームには松尾らドラ1勢の活躍が欠かせない。

(文:戸井田涼花)

『すぽると!』
毎週(土)24時35分~
毎週(日)23時15分~
フジテレビ系列で放送中