東日本大震災から14年を迎えた岩手県大船渡市。2月には大規模な山林火災が発生し、1人が亡くなり約2900ヘクタールを焼失。二重の災害に見舞われた住民たちは、厳しい現実と向き合いながら、午後2時46分に祈りを捧げた。津波で被災し、さらに山林火災で自宅を失った住民は「二度とこういう思いはしたくない」と心境を語った。
震災から14年…火災の爪痕残し
3月11日朝の大船渡市。
市内では東日本大震災で死者・行方不明者合わせて502人が犠牲になった。

大船渡では2月、大規模な山林火災が発生。
1人が亡くなり、およそ2900ヘクタールを焼き、3月9日、鎮圧した。

最大4596人に出された避難指示は10日までに全て解除され、復興への道を歩んでき大船渡市は、火災の爪痕を残して東日本震災から14年を迎えた。
「二度とこういう思いは」
三陸町綾里。この港地区は山林火災で42棟の建物被害があった。
「まさかここまで火の手が早く回ると思っていなかった」
こう話すのは港地区に住む森下幹生さん(75)。

14年前、経営していた市内の水産加工会社が震災による津波で被災した。
会社を再建させ一歩ずつ復興への歩みを進めてきたが、今回、山林火災で自宅が全焼。二度の大きな災害に見舞われた。

森下さんは「行事があればここに集まって飲んだり食べたり、そういう場所でしょっちゅう集まっていた。思い出の玉手箱だ、本当に残念だね」とショックを隠せない。

東日本大震災と山林火災と二度の災害を経験した森下さんは、「現場を見ると、改めてもう何もかも失ったわけだから。津波もそうだったけど二度とこういう思いはしたくないなと年も年だし」と、厳しい心境を吐露した。
母親の墓参りができた
避難指示の解除により大切な人の供養ができた人もいる。
3月10日、立ち入りの規制が解除された三陸町綾里にある長林寺。
3月10日まで避難生活をしていた地元の男性が、14年前、津波で亡くなった母親の墓参りに訪れていた。

津波で母親を亡くした山岸中さん(50)は「山林火災の関係で3月11日は避難所でお参りはできないのかなと思っていたんですけども、3月11日を前に帰って来られたのは母親がプレゼントしてくれたのかな」と語った。
漁師「前向きに頑張る」
そして、午後2時46分
綾里漁港で黙とうを捧げていたのは漁師の亘理孝一さん。震災の津波で自宅が流され今回は山林火災では漁業用の倉庫が焼けてしまった。

亘理さんは「生きていく上ではまた仕事が再開できるような環境に戻さなければいけないから、前向きな気持ちで頑張ろうと思ってはいるけど」と決意を語った。
全国から集まった消防士たちが黙とう
赤崎町では緊急消防援助隊が黙とうを捧げた。平成以降最大規模となった今回の山林火災を消し止めるため、全国から集まり消火活動にあたってきた消防士たちだ。

火災の鎮火に向け力を尽くす消防士たちは震災の被災地でもあるこの街に心を寄せていた。
それぞれが現実と向き合い…
自宅が全焼した森下さんは「山林火災の被害もありましたけど、被災から命だけは守るような一つの礎にして皆さんで追悼をしたい」と述べ、自身が会長を務める市内の水産加工会社で従業員へ命の大切を伝え、黙とうを捧げた。

山林火災を境に街並みが一変した大船渡市。
それぞれが現実と向き合いながら3月11日を迎えた。
(岩手めんこいテレビ)