2025年1月の実質賃金は3カ月ぶりのマイナスとなった。専門家は「賃上げが物価高に追いついていない」と指摘。輸入物価の影響が続く中、今後の賃上げ定着が課題とされている。

実質賃金が前年同月比1.8%減…3カ月ぶりのマイナス

毎月勤労統計調査によると、1月の働く人一人当たりの現金給与総額は、前の年の同じ月と比べて2.8%増え、29万5505円だった。

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このうち、基本給などに当たる所定内給与は26万3710円と3.1%増え、32年3カ月ぶりの高い伸びとなった。

一方、物価の変動を反映した実質賃金は、前年同月比で1.8%減り、3カ月ぶりのマイナスとなった。

厚生労働省は、消費者物価指数は前年同月比で4.7%上昇していて、物価の高騰に賃金の伸びが追いつかず、実質賃金がマイナスに転じたとしている。 

「物価高に負けない賃上げには至っていない」

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
3カ月ぶりに実質賃金がマイナスということですが、崔さんはどうご覧になりますか?

エコノミスト・崔真淑さん:
2024年の11月、12月と比べると賃金の上がり方はかなり鈍くなってきていると感じています。2024年は冬のボーナスが給料全体を押し上げていたが、その効果が2025年1月には剥落してしまったということが大きいです。

その結果、1月の名目賃金の総額は前の年の同じ月と比べて、2.8%のプラスとなっています。これ自体は39カ月連続のプラスではあるのですが、物価高に負けない賃上げには至っていないという動きです。

堤キャスター:
もう少し給料が上がれば、というのが本音ではありますよね。

エコノミスト・崔真淑さん:
そうなんです。実質賃金のプラスが定着するにはやはり、基本給の底上げが欠かせないと思います。賃上げの行方に対して影響力を持つ連合が発表した2025年の春闘の賃上げ要求は、32年ぶりに6%を超えています。賃金上昇の勢いが増すことを期待したいところではありますね。

堤キャスター:
一方の物価高については、いかがでしょうか?

エコノミスト・崔真淑さん:
家賃を除く消費者物価を見てみると、4.7%に上昇するなど、名目賃金の上昇を上回る勢いで物価高が加速しています。

背景には、お米や野菜などの食料品の値上がりはもちろん、問題は輸入品の物価が上がっていることです。ここが収まらないと、私たちが肌感覚で賃上げや景気の回復を実感しずらい、そんな環境が続くのかなと思っています。

堤キャスター:
その輸入物価は、今後どうなるのでしょうか?

エコノミスト・崔真淑さん:
輸入物価を押し上げているのは、円安。それと資源価格の上昇で、それぞれの影響が半々ぐらいです。為替については、輸入品の価格を押し下げる円高が、足元では急激に進みつつあります。

そして、資源価格について言うと、暮らしに大きく関わる石油や小麦などは、世界的には価格が下落方向にあります。なので、物価上昇の勢いが落ち着く兆しが出ているだけに、物価高に負けない賃上げが定着するかどうか、今が正念場なのかなと思っています。

堤キャスター:
実質賃金のマイナスは景気回復を遠ざけてしまいます。物価高による消費の低迷など、悪循環を断ち切る政策を求めたいです。
(「Live News α」3月10日放送分より)

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